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「稲盛和夫の実学」に学ぶ値決めのセオリー

昨年の売上と経費を計算して、利益を税務署へ申告するこの時期、仕事のやり方を見直す良い機会です。売上や利益は、満足いく数字でしょうか。大事なことは、仕事の値段、つまり自分の値段の決め方にあります。

執筆者:塚田 祐子

仕事の値段、いくらが妥当?

独立したら、年収は自分で決めて、売上目標を立て、その売上をどうやってあげていくかを考えて、行動していかなければなりません。気をつけたいことは、売上を増やしても、利益(=年収)が増えなければ意味がないということです。100万円売り上げても、外注費や経費に80万円使ったら粗利益は20万円、これでは全く赤字です。同じく100万円売り上げても、そのために3ヶ月かかったら、時間給は安くなり、年収も下がってしまいます。そこで、「利益」をいかに増やすか、という発想で考えなければいけません。そして、それは、仕事の値段のつけ方と仕事のやり方にかかってきます。仕事の料金体系を作っている方は、その金額が妥当なものか、検証が必要になります。

稲盛和夫の実学
稲盛和夫さんが、ゼロから経営の原理と会計を学んでいった経緯が書かれています。
経営の大原則は、「売上は最大に、経費は最小にして、利益を増やすこと」にあります。「値決めは経営である」という名言で有名な、京セラ創始者であり、現KDDIの創設者である稲盛和夫さんの言葉を借りると「商売というのは、値段を安くすれば誰でも売れる。それでは経営はできない。お客様が納得し、喜んで買ってくれる最大限の値段。それ以上高ければ注文が逃げるという、このギリギリの一点で注文を取るようにしなければならない。」(「稲盛和夫の実学」日本日経新聞社より) 私は、この一文を読んだ時、深く感銘しました。そして、それからは、“お客様が納得して発注してくれる、最大の値段”はいくらなのか、というように考えるようになりました。


価格戦略は、生き残っていけるかどうかの生命線

しかし、仕事を発注する企業サイドには、個人は安いコストで使えるという前提があります。仕事の値決めについては、どうしても妥協しなくてはならないような状況ができあがっています。稲盛さんの値決めのセオリーは、現実的には簡単なことではありません。しかし、そうした現状を踏まえた上で、やはり結果的には、価格を高く設定する方向で考えていかないと、満足できる年収を確保するのは難しくなります。

しかも、個人事業は、自分が稼動することで売上をつくるため、もともと薄利多売ではやっていけません。1日24時間という限界があるので、収入を増やすには時間単価を上げていくしかないからです。安い仕事は、いくらでも転がっています。そうは言っても背に腹は変えられないと、安易に飛びついてしまうと、「負のスパイラル」に陥ってしまう危険があります。自分の値段を安くしてしまうと、いつまでたってもラクにならない自転車操業に陥って赤字体質をつくってしまうからです。価格戦略は、生き残っていけるかどうかの生命線になってきます。

※自転車操業の赤字体質:実は、利益が出ていない状態。支払いに対して収入があるうちは、お金が回って生活ができているが、入金までの間があくと、すぐに資金ショートして立ち行かなくなってしまう状態。

では、どうやって仕事の値段を考えたらよいのでしょうか。次ページへ続きます>>
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