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プロフェッショナルマネジャー 58四半期連続増益の男(2ページ目)

経営の鬼神として知られるハロルド・シドニー・ジェニーン氏の経営回想録。この本に衝撃を受け、経営の教科書とする株式会社ファーストリテイリング代表取締役会長兼CEO柳井正氏が解説!

執筆者:藤井 孝一


【1】

会社とその最高経営者と経営チームの全員は、業績というただひとつの基準によって評価されるべきだ。

たとえば、似たような他の会社と比べて、その会社と経営者は何をやったか?よきにつけ、あしきにつけ、その時どきの経済環境の中で、どんな業績を挙げたか?

業績とは、ある四半期または1年の損益計算書についてあげつらわれるものではない。長期にわたって会社に組みこまれたものだ。

去年やったことを今年も繰り返し「この会社は毎年あるペースで成長し続けることができる会社だ」と、みんなを信用させるだけの力がなくてはならない。

変化してやまないビジネスの世界で、長期にわたって持続する、そういった種類の成長と実績が必要なのだ。

【2】

経営理論は3行あれば十分だ。すなわち「本を読む時は、初めから終わりへと読む。ビジネスの経営はそれとは逆だ。終わりから始めて、そこへ到達するためにできる限りのことをする」というものだ。

現実的な確固とした目的を定めること、つまり、終わりから始めることのすばらしい点は、それ自体が、その目的に達するためになすべきことを示してくれ始めるところにある。

たとえば、Zに到達したければYに行きつかねばならず、Yに行きつくためにはXを達成しなくてはならないといった具合だ。それぞれのゴールが、そのゴールに行きつくためにしなくてはならないことを明示し、ボトムラインにもなっているのだ。

念願する“終点”にたどりつくまで、ひとつのボトムラインが、つぎのボトムラインに行きつくためになすべきことを順送りに示してくれる。こういう過程を繰り返しながら、物事は進行していくのだ。

それは芯が出てくるまで玉ネギをむくようなものだ。1枚の皮をむくとその下の皮にぶつかり、またそれをむく。そうしながら、われわれはいろいろのことを学ぶ。

【3】

初期の時代に私が学んだことのひとつに、ヨーロッパからの質問や要求に対して、私がニューヨークで下す決定は、仮に私がヨーロッパにいたら違うものになることがしばしばあるということだ。

たとえば、ヨーロッパからの要求に対し、ニューヨークで文書を読むだだけではノーと言うことも、ヨーロッパで要求者の顔を見、声を聞いて、信念が理解できればイエスと答えるかもしれない。

そこで、私は早くから、もし私と本社の経営チームがヨーロッパ事業の状況を把握し監督するつもりなら、頼りになるのは現場にいるヨーロッパ人のマネジャーたちだと考えた。そして、問題は現場で、顔と顔を突き合わせて処理するのが会社の基本方針となった。

【4】

また、私は各ユニットが翌年や5年間の計画を立てることに時間をとられて、ともすれば現四半期の目標を達成できなくなっていることに気づいた。

「なあに、心配しなさんな。今期はだめだったけど、年度末までにはきちんと決まりをつけてみせるさ」という、昔ながらの落とし穴に、彼らは足をとられているのだ。

現実はそんなふうにはいかない。最初の四半期に目標を達成できなければ、けっして年間の目標を達成することはできない。まず、とにかく最初の四半期の収益目標を達成すべきだ。

それから第2、第3四半期の目標を達成すべく死力を尽くすのだ。そうすれば、第4四半期は、あまり努力しなくても計画通りにいくかもしれない。

だから私は「今後、長期計画はいっさい無用とする」という覚書を社内に配付し、四半期の収益の犠牲の上に立った入念な5カ年計画を作成することに歯止めをかけた。

むろん、後にそうする余裕ができてからは、われわれはさまざまな計画に時間をかけた。しかし、現四半期または年度のことをおろそかにすることは決してなかった。

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