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会社にお金が残らない本当の理由(2ページ目)

どんなにアイデアや発想が素晴らしくても、経営の背景になっているシステムがわからなければ会社はつぶれる。その差を知らずに、中小企業がいかに損をしているか、またシステムを利用してお金を残す方法について詳解する。

執筆者:藤井 孝一

【1】

ビジネスはゲームだ。その基本ルールは、儲けることだ。ところが、中小企業の多くがこのルールを理解していない。そればかりか今では通用しない常識に惑わされ、正しい経営感覚を失っている。

「儲け」を出すには、利回りをあげなくてはならない。だが、資産を銀行や郵便局に預金しているおばあちゃんより利回りが稼げないという中小企業が多い。

会計士はよく「大企業で利回り7パーセントぐらいが標準だから、中小企業はそれより少なくていいですよ」などと言う。だがこれは間違いだ。

預金と違い、運用の世界では資産ボリュームが少ないほど利回りを稼ぎやすいはずだからだ。当然、中小企業のほうが大企業より利率が高くなくてはならないのだ。

「預金口座にちゃんとカネはある」「役員報酬で生活もできる」「来月の支払いも大丈夫」と安心し、本来、稼ぐべき利回りを稼いでいない中小企業が多いのだ。


【2】

中小企業経営者は投資する資産をなるべく少なく抑え、利益はギリギリまで多く取るようにしなければならない。

点棒の計算ができない人に、マージャンのうまい人がいないように、利回りが評価できない人に、経営上手はいない。こうした経営者は、いわばゲームのルールも知らずに、駒を動かしているようなものだ。幸運と奇跡を頼ってビジネスを続けるのは、あまりに危険だ。

利回りを上げたら、次は会社にお金を残さなくてはならない。これを「内部留保」という。会社の利益がゼロなら、役員報酬の一部を内部留保しなければならない。役員報酬は、いわば社長の借受金だ。

それにもかかわらず、役員報酬をすべて自分で遣ってしまう経営者がいる。本来、経営者の自由になるお金など、いくらもないのだ。

こうしてできるだけ内部留保したら、次の事業へ再投資を行う。つまり経営とは利回りを稼ぎ、内部留保し、再投資することで「アガリ」となるゲームなのだ。このサイクルは3年と考えればよい。

【3】

再投資どころか、ひたすら借入金の返済に必死になっている経営者が多い。彼らは、過去の亡霊に追われているようなものだ。

ちなみに経営における「過去」とは「借入れの返済」、「現在」は「売上と利益」、「未来」は「内部留保と再投資」だ。この3つをバランスよく管理することが、経営というゲームの基本だ。

だが、現実には借入れにとらわれ、選択を誤る会社が多い。たとえば町のメインストリートに出店している店があるとする。店主は、まもなくショッピングセンターが近くに建設されることを知りつつ、その中に入る踏ん切りがつかない。借入れの返済で頭が一杯なのだ。

このように、見たくない現実から目をそむけ、小手先の問題解決を続けていると、結果的に経営は死に体になる。さらに周りを巻き込みながら転落の道をたどるという、最悪の結果を招きかねない。

【4】

日本の中小企業が、ゲームのルールを忘れてしまったのは、ひとえに戦後日本がおこなってきた社会主義的政策のせいだ。

1955年頃から1990年まで、私たちは特殊な時代を生き、上昇気流を満喫した。上昇気流は数々の矛盾も飲み込んでいった。

辻褄の合わない税法、ルールなきまま維持される経営、存在意義のない各種団体、社会保険制度、借入れ依存の企業体質。ぬるま湯のなかで、戦う力と意欲をそがれ、中小企業は自ら考えることのない依存体質へと骨抜きにされていった。

もはや、企業の平均寿命は20年を切っている。会社が人の寿命より長い時代は、すでに過去のものとなったのだ。何世代にもわたって受け継がれてきた原理原則や法則も、もはや通用しないのだ。

かつての常識では、生き残れない時代が現代なのだ。だが、もう一度、基本ルールに立ち戻り、自分の頭と価値観で経営をおこなえば、いろいろな問題が解決するはずだ。

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