商経(しょうけい)~無一文から1兆円稼いだ中国商人の教え

監修: 守屋洋 著者: 史源原 翻訳: 和泉裕子
体 裁: 単行本: 381p
サイズ(cm):21
出版社: インプレス
ISBN : 4844320726
発行日: 2005/03/11




貧しく賤しい家に生れながら、莫大な財産を築き上げ、第2の商聖と呼ばれるまでになった胡雪岩(こせつがん)。彼の成功と失敗にまつわる重要な事例を挙げ、ビジネス界で縦横無尽に活躍できた、その秘訣を解き明かす。本書『胡雪岩の商経』は台湾、韓国で翻訳出版され、ベストセラーとなっている。

●今週の選書について

本書は、無一文から一兆円を稼いだ中国商人、胡雪岩の商道一代記から、商売成功の秘訣を学ぼうとするものです。胡雪岩は金貸しの便所掃除から、紫禁城を馬で乗り入れる豪商にまで出世した人です。

日本では、あまり知られていませんでしたが、中国ではテレビでドラマ化されるなどして、広く知られるカリスマです。他にアジアの一流経営者にも尊敬されていて、たとえば韓国などで本書は19ヶ月連続のベストセラーになっています。

彼自身は書物を残していませんが、彼の物語や語録からは、現代にも通ずるビジネスの原理原則と経営哲学を読みとることができます。



胡雪岩のみならず、そもそも中国商人に学ぶという趣の本は、これまであまり日本で紹介されてきませんでした。ユダヤ商人に学ぶというたぐいの本が、多数紹介されているのとは、対照的です。なぜ、お隣りにいる商売の天才たちにもっと学ばなかったのでしょう。

本書が面白いのは、松下幸之助やアメリカの石油財閥アーマンド・ハマーなど、胡雪岩的な経営者の事例を、世界中から集めて取り上げている点です。

結果的に本書は、400ページの超大作になっています。ただし、テーマが14に分かれ、それぞれ3セクションに分かれていますので、つまみ食いができ、読みやすい本に仕上がっています。経営者や成功本が好きな方なら、いつもそばに携えておく本としてお勧めです。

さらに、本書は中国ビジネスを学ぶという観点からも、たいへん参考になる本です。官との密着や友人を大切にする文化など、中国的な事情がよく分かります。

ビジネスの面で、日中間はますます距離が近くなっており、中国関連の仕事に携わる人も増えているはずです。そういう方が、中国と中国のパートナーを知る上で、ためになる一冊だと思います。


●結局、人なのだ

本書の主人公、胡雪岩はユニークです。身分もお金もない貧しい家に育ち、苦労して立身出世をとげ、最後は大富豪になるのですが、この手の話なら、日本にもたくさんあります。

しかし、違いはそのやり方にあります。ありがちな成功物語なら、貧しい境遇にめげずにこつこつ働き、ためたお金で商売を立ち上げ、最後に経営者として成功するというところでしょう。

しかし、本書の主人公、胡雪岩はもっと大胆です。“投資”を自分の成功物語の中核に置きます。投資先は、株でも不動産でもなく、人です。卓抜した洞察力で、時には背任にあたるほどの大胆さで、人に投資をします。やがて、投資した人物たちが、政府の高官などになり、そのつてで商売が引き立てられていきます。

彼の手法を、今の時代にそのまま、実践することはできないでしょうが、人に投資をすることの大切さは、成功する上で決して忘れてはならないことだと思います。



いずれにしても、本書のテーマは“人”です。このように「結局、人なんですよ」というオチを付けると、精神論やタテマエ論を語っているようにとられそうです。たしかに、現役を退いた経営者が口にしそうなフレーズです。

しかし、現実的な話として、やはりビジネスは人だと思います。それは「良い人材を見つければよく働いてくれるので、作業効率があがりますよ」などというレベルの話ではありません。

たとえば、次々と新規事業を成功させる元気な企業を見ていても、経営者個人が、一人で次々アイデアを発想しているわけではないことが分かります。

多くは、誰かがアイデアを運んできます。仮に、アイデアそのものは経営者でも、そのアイデアを確実に実行できる人材との出会いがなければ、その事業は実現しません。

要するに、人との出会いがなければビジネスは成長しないのです。これは個人の成長でも同じです。この事実にいち早く気づき、より多くの出会いに投資した人から、成功できるのだと思います。


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