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世界を不幸にした グローバリズムの正体(2ページ目)

2001年のノーベル経済学賞の受賞者であるスティグリッツが、アメリカ・IMF主導のグローバリズムに異議を唱えた衝撃的な1冊。

中野 裕哲

執筆者:中野 裕哲

起業・独立のノウハウガイド

【1】
  
自由貿易を取り払い、世界経済を緊密化させる、いわゆるグローバリゼーションは、発展途上国、中でもそうした国の貧困層を豊かにする力を持っている。

ところが、実態は全く逆だ。こうした層に壊滅的な影響を与えている。それは大国が自国の都合で、発展途上国に各種政策を押し付けてきたせいだ。

私はクリントン政権下で経済諮問委員長をしていた。また世界銀行にもいた。そのどちらでも、経済政策は権力者の利害や信念で決められていた。

学者の提言は軽んじられ、証拠は彼らの都合で捻じ曲げられた。その結果、見当違いの行動がいくつもとられ、問題を解決しなかった。

政府は、自国の成長をうながすことだけでなく、その成長が他の国にも公平に共有されるような経済政策を採るべきなのだ。

【2】

グローバリゼーションを進める機関、つまり国際通貨基金(IMF)、世界銀行などに対する批判や抗議運動、暴動が世界中で激化している。

最近では途上国にとどまらず、先進国でも抗議運動が起きている。さすがに為政者たちも自分たちの考えや行動を再検討し始めている。

本来、発展途上国を成長させ、貧困を効率よく軽減させるグローバリゼーションが、なぜ貧困の軽減だけでなく社会の安定性保持にまで失敗しているのか?

原因は、欧米諸国の偽善にある。欧米は貧しい国に貿易障壁をなくすよう迫り、輸出からの収入を奪いながら、自らの障壁は守ってきたのだ。

そして、その恩恵を特定の商業と金融に行き渡らせてきた。これは結果的に途上国だけでなく、先進国の消費者と納税者にも高い代償を払わせている。

【3】

グローバリゼーションでは、善意の努力さえも逆効果になる。例えば、欧米が推奨するプロジェクトが失敗しても融資の返済義務は途上国の人にある。

その代価は大きい。環境は破壊され政治プロセスは腐敗し、急激な変化に国の文化は適応できない。社会が崩壊し、失業者の暴動や民族の衝突を生む。

問題はグローバリゼーションを支配する3つの主要な機関、IMF、世界銀行、WTOである。

「市場は有効に機能しない」という信念の元に設立されたこれらの機関も、今ではすっかり市場主義者だ。

きっかけは1980年代レーガンとサッチャーによる市場主義の布教だ。これらがその伝道機関だった。融資と補助金が必要な国々に見返りとして押し付けた。

【4】

国際経済機関の代表IMFは、途上国で経済危機が起きると国民への影響を考慮せず、時代遅れで不適切な解決策を採用してきた。

どんな痛みを伴っても「それは市場経済に移行するために必要な痛みだ」と決め付ける。途上国の人は援助打ち切りが怖いので従うしかない。

こうした過ちが起きるのは、経済機関を支配するのが世界有数の富裕な工業国だからだ。当然政策には、その国の商業的、金融的利害が反映される。

また、各国を代表するのはIMFでは蔵相と中央銀行総裁、WTOでは貿易相だ。当然、各大臣は国内ビジネス界や金融界とつながっている。

そして、彼らはより多くの貿易障壁と補助金の維持を望んでいる連中なのだ。

【5】

そろそろ国際経済のルールを変える時期である。イデオロギー重視はやめ「何が機能するか」のほうに目を向けるべきだ。

そのためには、国際レベルの決定を、誰のために、どのようにするのかを考える必要がある。

政策立案のプロセスが適切に公正に進められ、それに影響を受けるすべての国が発言権を持てば、それが新しいグローバル経済を生み出すはずだ。

そうすれば、成長はより持続的になる。しかも成長の恩恵はさらに公平に共有されるようになるはずだ。

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