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見えない経済大陸へ挑む 大前研一「新・資本論」(2ページ目)

アメリカとイギリスでベストセラーとなった『The Invisible Continent』の邦訳。『企業参謀』をはじめ、数々の名著を生みだしてきた著者が描く、勝ち組の戦略とは?

中野 裕哲

執筆者:中野 裕哲

起業・独立のノウハウガイド

<読書サマリー>

【1】

現代社会において、もはや手つかずの新大陸など残されていない!と考えられている。しかしここ50年ほどの間に新大陸は現れた。

ただし、それは実体のある陸地ではない。我々の頭の中だけに存在する「見えない大陸」である。そこには4つの空間が並存している。

まず「実体経済の空間」だ。今でも地元の商店は商品やサービスを提供してくれる。つまり“クリック&モルタル”の“モルタル”の部分だ。

次に「ボーダレス経済の空間」だ。もはや国境は意味がない。消費者も投資家もより税金の安いところで取引をしようとする。

次に「サイバー経済の空間」だ。これはコンピュータと通信技術が生み出したサイバー空間のことである。

【2】

最後に「マルチプル(倍率)経済の空間」である。これは数学的に作り出された数字が作り出す経済のことである。

例えば、企業に対する期待値が企業の価値をハネ上げる。アマゾンが利益がゼロのころから他の企業をいくつも買収できたのはそのためである。

今や、ほとんどの人が4つの経済空間と関わっている。目に見えない大陸の経済空間は身近なものになった。にも関わらずビジネスでも政治でもリーダーたちは旧世界を前提に判断している。

例えば、日本政府は1世紀前のケインズ経済学に基づき不要な道路や橋を建設している。多くの大企業も実体経済しか見えずに四苦八苦している。


【3】

これから成功する企業はこれら4つの経済空間のすべてに調和でき、今どこにいて、何をすればよいかを適切に認識する能力を磨く企業である。 

例えば新大陸では、知識、サービス、資本は簡単に流通する。そのため国や企業による市場のコントロールはできない。消費者が市場で力を持つ。

またそこは体制もインフラも開発途上の地である。将来を予測することは不可能である。だから新大陸に資源をすべて投資すべきではない。

ただこれまでの地域社会や、旧世界の有力な人脈などは役に立たなくなる。この世界では膨大な額のお金が生産や消費とは無関係に、個人の気分で取引されているのだ。


【4】

企業がこの新大陸で成功するには、まずプラットフォーム(スタンダード)を形成し、多数の人々を仲介し簡単にコミュニケーションできるようにすることが重要である。

例えば、クレジットカードの世界では、ビザとマスターがプラットフォームとなった。この2社がスタンダードとして他を飲み込んでしまったのだ。

しかし彼らとて、物流ではフェデックスというプラットフォームを活用する。そして複数のプラットフォーム企業が一つの会社のように機能する。

これからの企業は、自社をこうしたプラットフォームにあわせて調整することである。それにより自社のサービスがプラットフォームになる。

【5】

新大陸で成功するには、新しい経済特有の道具の使い方、消費者へのアプローチ、製品によって「新たな価値創造」を追求することである。

しかし、残念ながらこれまで成功してきた大企業がこれに成功した例は聞いたことがない。それは犬を猫に作り変えるくらい難しいことのようだ。

旧い大企業には過去に確立された考え方がある。例えば、“自社の能力を知り、狙う顧客のニーズを知り、それを競合以上に満たすこと”が戦略であった。

しかしもはや顧客も競合も定義できない。旧い戦略論は役立たないのだ。結局、大企業はこうした旧い考えを捨てることからはじめなければならない。

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