企業のIT活用/IT経営の基礎知識

Web2.0な日々 こちら側とあちら側

Web2.0では「あちら側」(提供側)と「こちら側」(ユーザー側)の垣根が低くなりました。「あちら側」の企業としては「こちら側」をいかに巻き込むかの勝負になっています。

水谷 哲也

執筆者:水谷 哲也

企業のIT活用ガイド

Web2.0時代の「あちら側」と「こちら側」について考えてみましょう。

と言いましても、別に冥界の話ではなく、サービスやソフトを提供する「あちら側」とサービスやソフトを使うユーザーである「こちら側」についての話です。

パブリックコメントで「あちら側」へ意見を出せる

皆さんはパブリックコメントを出されたことがありますか。
パブリックコメントを「あちら側」に出す
パブリックコメントを「あちら側」に出す

パブリックコメントとはお役所で立案する政策に対してコメント(意見)を出せる制度です。国民の多様な価値観を政策に反映させるため平成11年4月から国で始まり、今では県や市でも実施されています。

10年ほど前、お役所でどんな政策が審議されているか知るには新聞や業界紙ぐらいしか情報源がありませんでした。

新聞の場合、どうしても税制改革など一般読者が興味をもちそうな政策しか報道されません。つまり新聞社によるフィルターがかかることになります。また自社に関係する業界以外の業界紙はふつう取りませんので、他業界の政策は知るすべがないというのが実態でした。

例え審議中の政策が分かっても個人が政策に対して意見を出そうと思えば、新聞の投書欄に意見を述べるぐらいしか方法がありませんでした。つまり政策を作る「あちら側」(お役所)でほとんどやってしまい、「こちら側」(国民、市民)が審議中の政策に意見を言う機会はほとんどありませんでした。

ところがインターネットが普及したことにより様変わりします。現在、各省庁のホームページに審議中の政策が掲載され、一定期間パブリックコメントで意見を募集しています。意見を出す側は電子メールで気軽にコメントを送ることができます。

つまり「こちら側」で審議中の政策を見ることができ、また「あちら側」に意見を言うことができるように変わってきています。寄せられたパブリックコメントをどう取り扱ったかも公開されています。お役所内でクローズされていた政策作成のプロセスが可視化、つまり「見える化」したことになります。
→ 「パブリックコメントを書いてみよう!」

お役所にとっても政策立案段階から、国民や市民に法律を理解してもらえるなどメリットがあります。もっとも中には電気用品安全法(PSE法)のように周知のやり方が悪く、せっかくのパブリックコメントがいかされていないケースもあります。
→ 「PSE問題、私にどんな影響があるの?」

「あちら側」を見える化

この「こちら側」と「あちら側」ですが、コンピュータのソフトやサービスの世界でも同じ動きになっています。
テストして完成してからリリースする
テストして完成してからリリースする

メーカーがソフトやサービスを作る場合、限られたユーザーによるベータテストは行いますが、基本的に最初に考えた仕様で仕上げ、完成形でリリースします。つまり「あちら側」で完成までクローズしていました。

このやり方ではサービスやソフトを市場に出すまで市場のニーズとあっているかどうか分かりません。市場に受け入れられないことで、よい製品なので皆が使ってくれるはずだというプロダクトアウトの考えで作ってしまったことが初めて分かります。

市場で受け入れなければ、もう一度、仕様から見直さなければなりません。またメーカーが考えていなかった想定外の使い方をユーザーがする場合もあります。これらは次のバージョンアップで反映させることになります。

政策立案がパブリックコメントの制度で「見える化」されたのと同じで、ソフトやサービスの完成に至る途中で「見える化」が行われるようになっています。まずベータ版として公開し、ベータ版をユーザーに使わせて、その反応をフィードバックし、どんどん製品としての完成度をあげる方法がとられるようになっています。

具体的なベータ版の事例を見ていきましょう
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