●収支予想 |
さて、しばらくした後、島津氏がまた三成に相談をしてきました。
「三成殿、領地が減らされたことで今後は収入不足となるはずです。島津の行く末をどうすればよいでしょうか?」
「島津殿、まず帳簿が整理されてきましたので、それを元に予想をしてみましょう。」
「どうやるのですか?」
「今までの実績が帳簿にあるので、それから割り出していきましょう。家臣の数が変わらないとすると翌年も同じぐらいの経費が発生します。実入りとなる年貢の徴収が薩摩・大隈・日向の三ケ国分となりますので、それで計算すると来年の夏には足りなくなります。」
「それは、大変だ!博多の商人への借り入れなど勘定方へ指示しなければ。」
「島津殿、そうあわてなくても代々の名家である当家には蓄えがあります。この帳簿をご覧ください。金銀の形で持っているもの、また米などもあります。これは売ればお金と同じです。これだけの蓄えがあるので、当分は持ちこたえられます。」
「ひと安心ということですなあ。」
●経費削減で時間を稼ぐ |
三成は島津氏に向かって、大きく首を振りました。
「ある程度の余裕はありますが、今までと同じことをやっていればいずれ立ち行かなくなります。」
「今日からやるべきことをやる必要があります。まずは、経費の削減です。昔からの慣習ということで意味のないことにお金をかけたりしています。家中の色々な仕事を前例踏襲でなく、何の為に必要なのか考えて見直しをかけてください。」
「なるほど。まずはわしから率先してやらねばならないな。家臣も減らさなければならんだろうな。」
「もう少しお聞きください。経費を削減すれば時間を稼ぐことができます。立ち行かなくなる時期を先に延ばすことができますが、いずれ立ち行かなくなるのは同じです。」
「では、どうしたら。」
「島津殿、時代は変わりました。隣国を切り取って領地を増やし国を経営していくことは無理です。これからは商業が重要視される時代です。例えば領地で取れた作物を市の立つ大阪で売って、利益を得ることもできます。そうすれば少ない領地でも運営することが可能です。」
「作物を大阪で売るだけで可能でしょうか。」
「もちろん、他の地域の作物に負けないものや薩摩でしか出来ないものでないと売れません。」
「今までにやったことがないので最初からうまくいくはずもありません。島津殿の場合は蓄えも充分ですので、その間に色々と模索し、作物を育て売る仕組みを作っていくことです。また当家は琉球や中国に近い地の利がありますので、貿易を行う手もあります。」
「もちこたえられる間に新しい飯の種を作れということですな。」
「そうです。新しいことを行いますので人員も必要です。家臣は減らさず、そちらにお回しください。もちろん最初は経費が多大にかかりますが、やがて実入りと逆転する時が来ます。毎月、経営状況がどうなっているかしっかり帳簿を管理してください。」
「三成殿、貴殿からさずけられた策、ぜひとも今日から実行させていただく。ご恩は忘れぬぞ。」
●経営革新を行う |
会計システム導入の目的はタイムリーに経営状況を把握するためです。資金繰り以外にも流動比率、従業員別売上高等の各指標をチャックし、経営に黄信号がともっていないかどうか確認します。
先行きが危ないと思った時は次の一手を打たなければなりません。
ただし、最初からうまくいく事業などはありません。時間をかけて事業を育てていく必要があります。どれだけの時間をかけるころができるかどうか会計システムでチャックを行いながら経営判断をしていきます。
●慶長5年9月15日 |
さて、時は流れ、関ヶ原の地に「丸に十の字」の旗がひるがえります。
三成の呼びかけに応じ、遠く薩摩から馳せ参じた軍団の姿がありました。