3年間で100万社の生産性向上を目指す
製造業では製造ラインにロボットを導入し生産設備を刷新をすることによって世界で戦える生産性を実現しています。これに対し、日本企業のサービス業やオフィス現場ではいまだ生産性が低く、人口減少社会を迎えるなか、生産性向上が課題になっています。
これを受け、中小企業の生産性向上をはかるためにはじまったのが「IT導入補助金」です。中小企業3割にあたる100万社の生産性向上を目標としており、2017年には100億円の予算がつき、1万4301社に補助を行いました。2018年の予算は500億円となっており13万社を対象にして、3次募集まで行われる予定です。
【2018年 IT導入補助金 応募期間】
- 1次募集 現在~6月4日(月)締切
- 2次募集 6月中旬~8月中旬
- 3次募集 8月中旬~10月中旬
IT導入補助金の対象・金額・上限は?
【対象となる個人・法人】- 事業を営む個人および中小企業
- 医療法人
- 社会福祉法人
- 事業を営むNPO
- 組合
【対象となる物品】
- ソフトウェア
- クラウド利用費
- 導入関連経費(コンサルや教育など)
ホームページ製作費も対象です。ただし、補助実施期間が3ケ月と短期なので、ワードプレスのような雛形を使わければ期間中に終わりません。また、単なる会社案内サイトでは対象とならず、予約機能など少し高度な機能がついている必要があります。既にサイトがある場合、作り替えも補助金の対象となります。スマホ対応になっていないサイトをレスポンシブデザインに変更したいのならば、チャンスです。
【補助率・金額】
補助率は2分の1、補助額は15~50万円なので、「30万円以上するソフトウエア」が対象です。数百万円のソフトを購入しても、補助額は上限の50万円までです。
登録されているITツールから選ばないとダメ
とはいえ、「自分でソフトを買ってきて入れたから補助金ちょうだい」というのはダメで、ITベンダー(IT導入支援事業者と呼んでいます)が登録したITツールから選ぶ必要があります。ツールを一覧できる「ITツール選定ナビ」が用意されていますが、自社の近くのITベンダーを探せない、フリーワード検索ができないなど使いにくい面があります。
知り合いのITベンダーに聞くか、知り合いがいなければ全国にある国が設置した相談窓口「よろず支援拠点」で相談してください。ガイドも「よろず支援拠点」のコーディネータをしていますが、事業者からIT導入補助金に関する相談が増えています。
ITツールの登録は、ITベンダーの自社製品でなくてもかまいません。導入したいソフトがあれば、知り合いのITベンダーに声をかけて登録してもらった上で、導入することができます。
IT導入補助金の申請はどうやってやるの
通常の補助金は自社で申請書を書いて事務局へ出しますが、IT導入補助金は異なる方式です。導入したいITツールを登録しているITベンダー(IT導入支援事業者)を通じて申請する代理申請型になっています。
まずはITベンダーに受けてもらえるかどうか確認しましょう。特にホームページ作成の場合、注文が補助実施期間に集中するためにマンパワーが足りず、注文を断っているケースもあります。ITベンダーにとって手離れが悪いITツールも同様です。
ITベンダーの目処がつけば、申請前に3つのことをやっておかなければなりません。
(1)「経営診断ツール」の実施
金融庁と経済産業省が作った「ローカルベンチマーク」(ロカベン)に準じて作られた経営診断ツールです。従業員数や業種などの基本情報や2期分の決算情報、5つの視点の質問に答えると、レーダチャートなどで自社の課題を把握することができるツールです。診断結果を申請時に提出します。
(2)「セキュリティ対策自己宣言」の一つ星を取得
情報処理技術者試験などを実施している情報処理推進機構(IPA)が運営しているSECURITY ACTION(中小企業自らが情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度)です。一番簡単な一つ星でよいので取得しておきましょう。自己宣言するとロゴマークが送られてくるので、これを申請時に提出します。
(3)「おもてなし規格認証」の紅認証を取得
必須ではありませんが、加点項目になっていて無料で簡単に取得できますので、やっておきましょう。おもてなし規格認証のサイトにアクセスし、紅認証(無料)を取得します。セキュリティ対策自己宣言と同じで宣言するだけで取得できます。登録マークをダウンロードして申請時に提出します。
IT導入補助金の注意点
■事業計画作成が必要
申請にあたっては、計画の目標値があります。ITツール導入によって
- 3年後の生産性の伸び率が1%以上
- 4年後の伸び率が1.5%以上
- 5年後の伸び率が2%以上またはこれらと同等以上の生産性向上
事業計画といっても簡単なものです。
生産性は
「粗利益(売上 - 原価) / 従業員数 × 1人当たりの平均勤務時間(年平均)」
で計算します。ITツール導入で無駄な会議や仕事にかかる時間が削減できればOKです。
■ITベンダーに経営情報を渡す必要がある
ITベンダー(IT導入支援事業者)を通じた代理申請のため、ITベンダーに自社の売上や粗利を報告する必要があります。「税理士なら分かるけど、なんでITベンダーに……」とIT導入補助金を断念する事業者もいます。補助金が採択された後も5年間、ITベンダーを通じて売上や粗利などを報告する義務があります。
■ITベンダーとの契約は補助金が通ってから
ITベンダー(IT導入支援事業者)との事前相談は問題ありませんが、契約は補助金対象者となり交付が決定した後でないとダメです。
■補助実施期間内に報告まで済ませる必要
また、決められた補助実施期間内に契約、導入、検収、支払、報告までを全てを済ます必要もあります。
■いったんは全額を自費で賄う必要
補助金が出るのは報告が全て終わった後で、先に全額をITベンダーに支払うことになりますから、この点もご注意を!
ITベンダー(IT導入事業者)への注意点
最後にITベンダー側の注意点です。(1)法人でないとダメ
個人事業での登録はできません。2018年の登録は9月初旬までです。
(2)ITツールは2つの機能を満たす必要がある
フロント機能、ミドル機能、バックオフィス機能の3つがあり、ITツールとして登録するには2つ以上の機能が必要です。会社案内のようなホームページ作成だけでは1つの機能しか満たさないため、予約管理など別の機能が必要になります。
(3)導入ノウハウがあること
自社サイトやソフトのパンフレットにユーザ企業の声や導入事例を掲載することで導入ノウハウがある証拠となります。注意すべきは「他社製品をITツールとして登録する場合」です。問われるのは「自社での導入実績」なので、自社パンフレット・サイト等に導入事例を掲載しなければ導入ノウハウがあるとはみなされません。
関連ガイド記事
ホームページ作成 依頼したらいくらかかるの集客できるホームページの作り方