企業のIT活用/IT関連法律の注意点

違反は公表!システム開発が下請法の対象(2ページ目)

下請代金支払遅延等防止法(下請法)の改正が行われシステム開発が対象となりました。また違反企業には勧告と同時に社名が公表されます。知らないではすまされません。

水谷 哲也

執筆者:水谷 哲也

企業のIT活用ガイド

親事業者には義務があります

親事業者の義務は4つあります。
1.書面の交付義務
2.支払期日を定める義務
3.書類の作成・保存義務
4.延滞利息の支払義務

1.書面の交付義務とは電話など口頭で発注するのではなく、きちんと書面を交わしなさいということです。中には支払期日や支払金額などを項目として記入します。
書類を交付する
書類を交付する

最終仕様が決定しておらず正確な作業工程や工数見積ができていない場合は支払金額などの項目を抜いた書面でもかまいません。ただし決定しだい項目を加えた書面とします。

最終仕様が確定してから始めて書面を交付するような行為は違反行為となります。

2.支払期日については商品受領日(または役務提供日)から起算して60日以内を支払日とします。60日を越えて支払日を設定することはできません。また支払期日を設定しない場合は商品受領日が支払期日になります。

システム開発の場合は納品締切制度ではなく、検収締切制度となりますが、検査に要する日数(受領してから検査完了までに必要な最長日数)を含めて60日以内にしなければなりません。

3.書類の作成・保存義務というのは下請事業者への検収結果や支払った代金、金額が変更になった場合はその理由などを記載した書類で、下請取引に係わるトラブルを未然に防止するために作成します。書類は2年間の保存義務があります。

4.延滞利息は親事業者が代金を支払期日までに支払わなかった場合に発生します。検収完了日から60日を超え実際に支払いをする日までの期間についてその日数に応じ、未払い金額に年率14.6%を乗じた額が延滞利息となり支払義務が発生します。

次はどんな事例が下請法の違反になるのか具体的にみていきましょう。

違反になる事例

「企業のIT導入」で起こりそうな事例を想定してみます。

買いたたき
仕様変更などで当初見積した時よりも発注内容が大幅に増えたにもかかわらず、当初の受注額が見直されない場合は「買いたたき」とみなされ違反です。
受領拒否
成果物の受領拒否をする

受領拒否
プログラムやシステムに瑕疵がない場合、検収で合格すれば受領拒否はできません。システム以外に例えば単体テスト結果などの証拠書類の提出を求めるなら、発注時の書面に記載しておく必要があります。発注時の書面にないものを求め、提出されないという理由で受領拒否すれば違反です。

返品
受領した後の返品は禁止されています。ただし直ちに発見できない瑕疵が見つかり下請事業者に責がある場合は受領後6ケ月以内であれば返品してもかまいません。

代金の減額
下請事業者に責がない場合、発注時の代金を減額すると違反となります。細かいのですが振込手数料分の減額や端数を1円以上の単位で切り捨てするのも違反です。

システム開発で想定されそうなのが無理な納期指定です。途中で大幅に仕様変更が発生しましたが当初の納期を変更せず、下請事業者が残業などでカバーしても納期に間に合わなかった場合、この納期遅れを理由に減額すると違反となります。

やり直し
瑕疵担保責任については、下請事業者に責がある場合は1年以内のやり直しについては問題はありませんが、1年を超えてからやり直しさせると違反になります。ただし親事業者と下請事業者が1年を超えた瑕疵担保責任期間を契約している場合は別です。

1年を超えた契約を結ぶ場合、それに見合う妥当な費用が支払われる契約になっている必要があります。費用の支払もなく1年を超える瑕疵担保を求めた場合は、たとえ下請事業者の了解を得ていても、また親事業者に違法性の意識がなくても、規定に触れ下請法違反となります。


親事業者の場合、どうしても力関係が強く下請企業に対し、強い要求をしてしまいがちです。

担当者に違法性の認識がなくとも、違反行為があり公正取引委員会に下請事業者からの申し立てがあれば、社名の公表など大きなイメージダウンになります。

下請法は知らないではすまされません。ぜひコンプライアンス経営を目指してください。

公正取引委員会から『親事業との取引に関する調査票』という調査票が郵送で届きました。下請法が改正され情報成果物作成委託が新たに対象になったためです。どんな調査票だったかと言うと...
>> 公正取引委員会から調査票が
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