企業再編や経営破たんで上場廃止となる企業が後を絶ちませんが、2002年1年間で78社が対象となりました。前年比34社増となり、3年連続で過去最多を更新しています。また、東京商工リサーチによると2002年の全国倒産件数は1万9087件(戦後4番目の悪化)で、うち上場企業の倒産は29社となりました。
倒産原因にも変化が起こっており、不動産をはじめとする資産の大量保有による資産デフレを起因とするバブル型倒産から、競争原理による採算度外視により利益確保が難航する不況型倒産へと移りつつあります。
【経営破たんしたゼネコン・不動産業者(抜粋)】
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■セザール破綻の波紋
3月24日、東京地裁へ民事再生法の適用を申請したセザールの負債総額(連結ベース)は約600億円で、マンション販売の競争が激化するなか資金繰りが悪化し、主力取引行の三井住友銀行などからの融資が受けられなくなり自主再建できなくなったことが原因とされています。
ここで被害を一番被るのは契約者であることは明白です。不動産の売買契約では契約時に手付金を支払いますが、当該契約が順調に履行されれば売買代金の一部に充当され、引渡し前に解約したい場合は同手付金を放棄することで対応する(買主からの解約意思表示の場合)ようになっています。
ところが売買契約締結後、引渡しを受ける前に売主が破綻すると、手付金はどうなってしまうのでしょうか?残念ながら今回のセザールのような例が少ないため、ほどんとの売買契約書には上記ケースに対応する文面は記載されていないようです。民法上の「契約行為」に立ち返って基本原則に基づくと、契約の相手方が契約内容を履行できない場合は契約の解除および損害賠償ができることとされておりますので、工事中断による履行不能であれば無条件で解約、引渡し時期の遅延による履行遅滞の場合は催告をした後であれば原則解約が可能となります。
■手付金は全額戻らない
日経新聞の記事によると「セザールが2002年4月から販売したマンションは約1300戸あり、すでに前払い金(手付金)を受領している約480戸の引渡しが残ってる。販売価格の10%に満たない手付金は(保全措置の対象外となり)一般債権に組み込まれるため契約者が返還を求めても全額戻ってくる可能性は少ない」と報道しています。
つまり、マンション建設に参加している業者の債権の肩代わりとして購入者の支払った手付金が一部充当されるわけです。投資物件ならまだしも、居住用マイホームでも購入者がリスクを負う危険があることを露見したモデルケースと言えるでしょう。
■すでに引越し済みの場合も注意
今までは未完成マンションの例でしたが、竣工して購入者が住んでいる場合に売主が破綻するとどうなるでしょうか?
アフターサービス(AS)が履行されない可能性が出てくる
新築マンションでは各部位によって2年~10年程度のAS保証を行っています。そもそもASとは売主の営業サービスの一環であり、瑕疵担保などとは異なり法的強制力がないためASが滞る心配があります。
売却時に不利となりやすい
売却を考えた場合に売主が倒産したマンションの場合、機能上で問題が発生するわけではありませんが買い手からすると良いイメージがありません。売主の系列管理業者が受託管理している場合では、管理業者にも悪影響が起こることが想定されます。
■マイホームにもリスクコントロールが不可欠
自宅の購入で考えられるのは、今まででは価格下落リスクや住宅ローンを組む場合の金利上昇リスクなどがありましたが、これからはさらに売主のデフォルト(倒産)リスクも視野に入れることが不可欠となります。自己責任原則がさらに広がっていることの現れといえます。