マンション、戸建てに限らず日本の住宅はその品質が飛躍的に向上してきました。建材や建設技術の進歩と、空調設備などの発達により暑い日も寒い日も室内は快適な環境が保たれるようになりました。冷暖房が普及し、断熱性能がよくなり高気密化が進むことで熱効率が高められるようになった反面、快適さと引き換えにアトピー性皮膚炎や気管支ぜんそくなどの「アレルギー疾患」と呼ばれる新たな文明病が深刻化してきています。
また、新建材や接着剤などに含まれるホルムアルデヒドなどの有害化学物質による健康被害とされるシックハウスも、室内の換気が不十分となり部屋に汚れた空気が滞留することが原因とも言われています。
外気を遮断し住み心地のよい環境を手に入れたはずが、われわれ人間の健康を蝕(むしば)むという皮肉な結果を招いてしまっています。
■ジメジメ時のカビにも要注意
浴室やキッチンはもとより、日光のあたらない北側住戸や傾斜地で地面に直接面する部屋などは壁にもカビが発生しやすく、お悩みのご家庭も多いでしょう。梅雨時など湿度が高くジメジメした季節に発生しやすいのはご存知と思いますが、冬場の窓におこる結露もカビを発生させる一大要因となりえます。
繁殖力旺盛なカビは我々が口にする食品は当然として、室内のほこりや浴室の垢(あか)・石鹸かすなども栄養分として広がります。カビは空気中に菌糸や胞子をばらまくので、体内に吸い込んでしまうと抵抗力や体質の弱い人は内臓にカビが生える内臓真菌症(※)や肺炎を引き起こすこともあり、バカにできません。
マンションの洋室はフローリング化が進んでいますが、カーペットが敬遠される原因のひとつにダニがあり、ダニは人の体垢や毛髪・花粉・虫の死骸・微生物の菌糸、そしてカビの胞子などをえさにしています。カビが増えるとダニも増える悪循環へつながるのです。
真菌とはカビやきのこの仲間のことで、真菌症とはいわゆるカビなどによって引き起こされる感染症です。真菌症にはカビが皮膚から進入して病変を起こす表在性のものと、呼吸や経口で体内に侵入して障害を及ぼす深在性のものがあります。 また、感染部位によって皮膚真菌症と内臓真菌症に大別されます。そして内臓諸器官にまで及ぶ深在性真菌症が内臓真菌症です。なお、皮膚真菌症の代表例は水虫です。 |
■ポイントは「掃除」と「換気」
そこで、カビやダニの発生を抑え健康被害を防ぐにはどうすればいいでしょうか?対策方法を考えてみましょう。
1)こまめな掃除
部屋を汚さないことが一番の対策です。カビの発生率は浴室が高く、次いでキッチンや押入れです。ダニはカーペットや畳、寝具などでしょう。発生場所は想像がつきますので、常日頃から清潔に保つ努力が不可欠です。さらにペットを飼っているご家庭では犬猫のしらみや排泄物・抜け毛なども注意するといいでしょう。
2)換気の徹底
きれいな空気を取り入れ、汚い空気を排気することで室内の新鮮度を維持することが重要です。2~3時間に一度は窓を開け放ち換気することをおすすめします。マンションは戸建住宅にくらべ開口部が少ないですが、最近では全熱交換式の24時間換気システムを取り入れた物件も増えてきました。
3)防カビ・防ダニ剤の利用
研究開発が進み、色々な種類の防カビ・防ダニ剤が発売されています。上手に活用しましょう。
4)日頃からの健康管理。
いくら換気や掃除をしてもハウスダストがゼロになることはありません。もし吸ってしまっても抵抗力がしっかりついていれば症状が出ることは少ないはずです。肉体的そして精神的に体力が弱まっていると悪玉菌にやられてしまいますので、日頃からストレスや運動不足・喫煙などに気を配り、本当の意味での“快適”な生活を送っていただきたいものです。