3月はマンションが投げ売りされる季節
読者のみなさんは購入したマンションの引渡し(引越し)を何月にしましたか? 大多数の方が3月ではなかったでしょうか?
ご存じ、日本は企業も教育機関もほとんどが『年度』を基準にサイクルします。就学児をもつご家庭では、ご子息の転校を考える際に新学期からの入学を望みますよね。つまり、4月からスタートをさせるためには、3月末までに引越しを済ませなければなりません。引渡し時期を3月末とする新築マンションが多いのも、こうした背景を考慮してのものです。そのため、同時期(=3月末)に大量の新築マンションが完成することとなり、「売り手」と「買い手」の需給バランスがかたよる現象を招くこととなります。
さらに、「3月決算」という言葉が示すように、企業にとって3月は年間売上げ目標を達成すべく、最後の追い込み(営業)をかける時期でもあります。何としてもノルマを達成するために販売促進に拍車がかかるのです。「販売を増やしたい場合に、最も即効性があるのが『値引き』なのは想像に難しくなく、マンションにおいてもこうした「禁じ手」が“水面下”で行われているのです(元住宅営業マン)」。
こうした、「年度」を基準とする日本の風習と、企業(分譲業者)の思惑が絡み合い、値引き合戦が展開されるのです。これこそが、マンション版「3月危機」なのです。
怒り爆発!! 住民側が訴訟へ
長期に渡る住宅ローンを背負い、やっとのことで手に入れたマイホームが購入時期の違いだけで何割も値引きされて販売されるのは違法として、販売業者に損害賠償を求める訴訟を起こすケースが散見されるようになりました。
しかし残念ながら、民間業者を訴えた裁判では住民側の主張を認める判例は少なく、販売業者に軍配があがっています。その理由は
市況により変動が予定される商品の売買契約が、他の同種同等の商品をそれ以下の代金で売買することにより、間接的にその財産的価値を減少させることのないようにすべき義務まで包含するものと解することは到底できない(大阪地方裁判所 平成5年4月)。 (販売開始から1年後に10~15%値引きしたことに関して)信義則上の義務に反し、社会通念上許容された限度を逸脱した違法な行為であるとは認められない(東京地方裁判所 平成8年2月) |
に集約されています。
学校で「投資教育」を受けてこなかった我々日本人は、「リスク」に対する意識が低いのが一般的です。いまだに預貯金は大半が定期預金やゆうちょ(郵便貯金)を愛用する人にとって、価格変動リスクや資産の目減りなどは耐え難いことでしょう。
これからは居住用マイホームも「需給バランス」によって変動することに気付き出すべきでしょう。