マンション購入術/マンション購入の失敗・トラブル

共働きマネープランの落とし穴

収入合算をして住宅ローンを組んだけれど、出産を機に奥様が会社を退職。この場合、返済はご主人だけになるけれど、問題はないのだろうか?

平賀 功一

執筆者:平賀 功一

賢いマンション暮らしガイド

■経済的自立?生きがい?それとも・・・

「亭主元気で留守がいい」

まさに時代を象徴したフレーズですが、このキャッチコピーのような「主人は定年まで会社人間」「奥さんは専業主婦で、ランチは高級レストランのバイキング(?)」といった家庭の構図は影を潜めつつあるような気がします。女性の社会進出により仕事に生きがいを感じるキャリアウーマンから、家計のやり繰りのために会社を辞められない奥様までモチベーションは様々ですが、結婚後も職を持つ女性が増えています。

毎月の収入が多いと人間は欲が出ますので「もっと駅に近く」「もっと広く」、しまいには「東京タワーが見える部屋に住みたい」と夢(そして予算)がふくらみ、その結果マイホーム取得において多額の住宅ローンを組むために収入合算をするようになるのです。

願いがかなって「東京都港区」の住民になったまではよかったのですが、収入合算により奥様が連帯債務者となった途端に子供をさずかり、会社を辞めなければならなくなったとしたら、住宅ローンの返済はどうなるのでしょうか?


■出産を契機に「共働き」が仇(あだ)となる

「連帯債務」とはその名のとおり、夫と妻が共同(連帯)して住宅ローン(債務)を返済していくことです。従って、この基本原則にのっとれば、奥様が退職しご主人が単独でローンの返済を全額していくことは本来あってはならないことです。しかし現実的には、長期に渡るローン返済のなかで奥様が仕事を辞めることは致し方ない部分もあるため、融資元(公庫や銀行)は予定通りに返済がされていれば(=滞納がなければ)ご主人の単独返済であっても黙認しているのが現状です。そのため実質的には「ご主人から奥様への贈与」に該当しても、贈与税を課すことはしません。

なお、同じ収入合算でも民間銀行では奥様が連帯保証人となるケースがあります。似たような表現ですが「連帯債務者」と「連帯保証人」はまったく意味が異なりますので混同しないよう、ご注意下さい。

 ※連帯債務と連帯保証の説明はこちらをご覧下さい。


■住宅ローン減税の還付額が半減する

ご主人が「主たる債務者」、奥様が「連帯債務者」(その逆も可)として収入合算をすると、ご夫婦それぞれで住宅ローン減税を受けることができます。同制度をきっかけに住宅取得に踏み切った方も多いと思いますが、しかし、奥様が仕事を辞めてしまえば所得税還付額は縮減してしまうのはご想像のとおりです。極端な話、2人のローン借入額とご年収(源泉徴収額)がほぼ同額であれば戻ってくる税金は半減してしまうのです。

ローン返済の一部として見込んでいた方にとっては致命傷でしょう。共働きマネープランの落とし穴が、実はこんなところに潜んでいたのです。


■対応策はあるのか?

では、そうした場合に対応策はあるのでしょうか?奥様がリタイアすることを想定しない資金計画を立ててしまったことに根本原因がありますので今更どうしようもありませんが、事後策として一定の金利差があるようならば住宅ローンの借り換えは有効です。しかし、ご主人単独の収入で返済率をクリアすることが求められますし、元本の減り具合や現在お住まいのマンションの担保価値がどのくらいなのかによっても成否は分かれてきます。

最低条件としてご主人だけの収入でローン返済が継続できることを死守し、同時に「余分な出費はないか」「保険のかけ過ぎはないか」我が家のマネープランを見直し、そして育児に余裕がでてきたらバイトやパートから社会復帰するのが無理のない方法でしょう。


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