「自動更新」されて、順番待ちに5年を費やす
マンションライフとカーライフは両立できないのだろうか? |
都内の駅近かつ狭小敷地マンションに住む知人は、敷地内駐車場の順番待ちで自分の番が来るのに5年かかったと言っていました。そのマンションの駐車場使用契約書は
使用契約期間は平成○年×月△日から平成△年○月×日の1カ年とし、使用契約期間満了の2カ月前までに甲(管理組合)・乙(借り主)双方より本契約を終了させる旨の意思表示がない場合には、さらに1カ年本契約を更新するものとし、以後、この例による。 |
と定められており、一度借りてしまえば本人(借り手)が解約を希望しないかぎり、期限なく借り続けることが可能になるシステムになっていたのです。当該マンションは最寄駅から徒歩4分の立地にあり、マイカー保有率も高くなかったために「待ち時間が5年で済んだ(?)」のです。
失礼ながら「待つ方も待つ方だ」といいたくなるほど、マンション駐車場事情を縮図化した事例の1つといえるでしょう。
いったい誰が悪いのか???
さらに、より複雑な事情をお持ちの方から、以下の相談がありました。
現在、11階建ての分譲マンションに住んでいます。敷地内駐車場は48台分あるのですが、平置き駐車場(1万5000円)が4台、残りの44台はすべてタワー式駐車場(1万円)になっています。我が家は入居と同時にタワー式駐車場を借りているのですが、2人の子供も大きくなったので、車高のあるミニバンへの乗り換えを考えています。
平置き利用者でタワー式駐車場にも納まる車があったので、管理会社にタワー駐車場が空いたときに(使用料が安いので)平置きの方で希望がないか聞いてもらうようお願いしたところ、「駐車場を使っている方にどけというようなものだ」という始末。そこで仕方なく、直接交渉してみることにしました。すると、驚いたことに当該平置き駐車場にある車の所有者は区分所有者ではなく占有者(賃借人)だったのです。管理会社に確認すると、駐車場込みの契約になっているようです。詳しく話を聞いてみると、占有者は我が家の隣の住戸の住人で、その部屋のオーナーは(平置き駐車場を)専用駐車場としていることが分かりました。
受託管理会社に相談しても「交渉を管理会社がやるのはおかしい」と逃げ腰で、直談判すべくオーナーの連絡先を尋ねると「勝手に教えられない」といった態度です。一体どうすればいいのか、アドバイスをお願いします。
まず確認したいのは、管理規約(駐車場使用細則)あるいは駐車場使用契約書で
・駐車場使用契約の「更新方法」がどのようになっているか
・区分所有者が本マンション外に居住し、専有部分を賃貸した場合の駐車場の取り扱い
がどのようになっているかです。ルールが明確になっていれば、その規則に従えばいいはずです。気になるのは「専用駐車場」という表現で、ここでいう“専用”がバルコニーあるいはトランクルーム等にかかる「専用使用権」の意味を有することになると、法解釈上はご相談にあったような第三者(賃借人)へのいわゆる『また貸し』が正当化されることにもつながりかねません。専用使用権とは「敷地および共用部分等の一部について、特定の区分所有者が排他的に使用できる権利」だからです。
一般的な駐車場使用契約は、貸し主を管理組合、借り主を区分所有者としますが、管理会社が貸し主(駐車場使用権の所有者)であるマンションもあるでしょう。この場合には、管理会社の判断を仰ぐことになります。いずれにしろ、まずは現状把握を最優先してください。
次に、管理会社の対応にも問題があります。本来であればトラブル当事者の間に入り、よき相談相手であるべきところがその機能をなしておらず、不快感さえ覚えます。
管理の主体は管理組合
今後の方向性としては、1個人の問題で終わらせず管理組合全体で解決の道を探ることが不可欠です。理事長あるいは理事会に持ちかけ、
・駐車場使用に関する組合員の不満をヒアリング(アンケート)
・管理規約や駐車場契約書の内容に問題あれば、見直しを行なう
・タワー型駐車場のメンテナンス費用のねん出方法
について議論してください。3番目のメンテナンス費用については直接、相談とは関係しませんが、機械式駐車場は維持管理費用がとても高くつきます。年間でみれば100万円単位のコストがかかっているはずですので、当該費用が駐車場使用料からの補てんだけで賄(まかな)えていれば理想ですが、管理費の一部も流用されている場合には、駐車場使用料自体の見直しも必要になります。
最後に、管理会社はマンション管理を業とする企業にしか過ぎず、管理組合の決議事項にアドバイスはできても決定権は何ら持ち合わせません。その点もきちんと理解の上、マンション管理の主体は管理組合であることを再認識しましょう。
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