会社の小口現金が合わない……
小口現金が合わない時の対処法
社員の経費精算や、切手や印紙など、少額経費の支払いに使う「小口現金」。手提げ金庫などに保管して、入出金を管理し、残高を合わせる仕事を担当している方も多いでしょう。自分のお財布なら、ちょっとくらいお金が合わなくても、「レシートもらい忘れたかな」で済みますが、会社のお金となるとそうはいきません。「あるべきお金」と「実際のお金」は、常に一致していなければいけません。
とはいえ、金庫の中を数えた時、あるべき現金と実際の額が合わないことがあります。何らかの理由で本当に違うこともありますが、記入ミスや数え間違いであることがほとんどです。「会計が合わない!」と気づいたら、まずは落ち着いて、これらのことを試してみましょう。
<目次>
小口現金が合わない時は急がば回れ!金種表に記入する
金庫に硬貨が多いときやってしまいがちなのが、数え間違い。これはあなどれません…。後で判明した時、「何でこんなこと間違ってしまったんだろう…」とあきれるくらい単純なミス。それに気づくまで何度も数えなおすハメに陥った経験、私にはあります。適当な紙に書いて計算するより、あらかじめ金種表を作っておき、きっちり記入して計算するようにしましょう。特に、小銭を銀行で両替した時に50枚が1本になっているものが混ざると間違えやすいので、金種表に記入して計算することで、数え間違いはかなり減ります。 もちろん自分の計算用に、式を入れたエクセルシートを用意しておけば尚いいですね。また、10枚ずつ仕切りがある「50枚収納のコインケース」も数え間違いを防ぐ強い味方。100円ショップでも買えます。
レシート型領収所の金額を見直してみる
レシートタイプの領収書で出金処理をする時間違えやすいのは、支払った額以外の額を記入してしまうこと。「支払額(合計)」「預り金」「お釣り」が同じ大きさで表示されているもの、消費税抜きの額が別に表示されているものもあり、間違いやすいです。合わない時はレシートを見直してみましょう。間違いを防ぐために、支払う時に、「支払額(合計)」に○やアンダーラインなどの印をつけておくのもいいですよ。レシートを見ながら起票、入力する時の間違いはここで気づきますが、 「経費支出願い」など、出金を依頼した社員が間違って書いてしまうこともあります。伝票に書かれた金額で、即処理せず、レシートの数字と合っているかチェックするのも忘れずに。
仮払いの有無を確認する
仮払していた経費が確定して、領収書の提出があった時、連絡や書類に行き違いがあると、その領収書で再度経費処理してしまうことがあります。手元の領収書が仮払の精算分でないかどうか調べてみましょう。同様に間違えやすいのが、仮払の精算で、不足額と超過額の処理を逆にしてしまうこと。現金は経費の出金のみ、入金は補充以外ないようにしている場合も、仮払の超過額は社員から現金で戻してもらうことがあります。その時は、「入金」処理が発生します。間違えないようにしましょう。
他の人に数えてもらう
考えられることは全部やった。それでもお金が合わないなら、他の人に数えてもらいましょう。案外単純な理由で間違っていることが、他の人なら簡単にわかることってホントに多いのです。お金が合わない、ということは、担当者にとって大変なストレス。「合わない、合わない」と考え込んでいるうちに、見落としてしまったり、思い込んでいる分簡単なミスに気づかないことってあるんです。
「すみませんが、数えてみて頂けますか?」と頼んでみましょう。また、新人さんが、何度も何度もお金を数えつつため息をついたりしてたら、先輩はぜひ「合わないの?私が数えてみようか?」と声をかけてあげて下さいね。
それでも金額が合わない時の経理処理
「どうしても合わない!」「50円足りない!」という状況になることも、残念ながらあります。この時どういった処理をするかは、会社ごとのルールで違いますが、いずれにしても、「合わない」ことを報告して、決められた処理をしましょう。簿記学習上では、「現金過不足」という勘定科目を使います。これは、経費でも、負債でも資産でもない仮勘定。実際より現金が多い時も、少ないときにも使い、最終的に費用(雑損失など)か収益(雑収入など)に振り替えることになります。
■現金が合わない時の会計処理の例
小口現金の実際有高が、帳簿残高より1100円少なかった。
現金過不足 1100 / 小口現金 1100
上記差異の原因を調べたところ、1,000円は50円切手10枚購入の記入漏れであった。残りの原因は不明であるため、雑損失として処理する。
通信費 1000 / 現金過不足 1100
雑損失 100
「お金が合わない」ときにやってはいけないこと
「お金が合わない」ことはあってはいけないことです。それでも、なんらかの理由で合わないことはあります。お釣りを貰い間違えたのに気づかなかった、領収書をなくしてしまった。それは担当者である自分の責任かもしれませんが、この時に絶対にやってはいけないのは、「これくらいなら私が出しておこう」とこっそり自腹で処理すること。実際にこんなことがあったそうです。現金の残高を計算してみたら、50円足りなかった。できることは全部やった。原因はわからないものの、自分が何かミスをしてしまったのだろうと担当者がお金を出そうとした。
それを止めて、課のみんなでよく調べてみたら、3万50円の領収書が書類の隙間に挟まっていたのを発見。同時に3万円の売掛金が入金されていたことがわかったのです。3万50円の出金と、3万円の入金。足し引きしての50円の不足。結果として「50円くらい」ではありませんでした。
正しく報告せず、担当者が50円を出して現金を合わせてしまっていれば、正しく経費を計上できないだけでなく、売掛金回収の事実が記録に残らず、お客様に督促してしまうことになったかも。これは会社の信用にかかわる大問題です。
「自分が出す」ことは、ミスの責任を取ることじゃなく、隠すことです。正しく報告することが、結局は大きなミスを防ぐことになります。
「自分の責任」と考えすぎてはダメ
少し話しはズレますが、「お金が合わない」という事実を、帳簿に絶対残さない、認めない会社もある、と聞きます。例えば「現金過不足」の仕訳を入れると、事実は残るそれを許さないということは、とても恐ろしいことだと思います。会社のお金を扱う以上、担当者として十分注意し、誠実に業務に取り組まなければいけないのは当たり前です。ですが、どんなに気をつけていても、現実に「お金が合わない」ことが発生することは考えられます。
原因はいろいろです。ひょっとしたら、「社員がお金を盗った」なんてことも考えたくないですがあるかもしれません。担当者は、「第一発見者」です。
第一発見者は隠しごとをしない
2時間ドラマの殺人事件なら。「第一発見者」はあわてて警察に通報し、状況を説明します。この場合、「かかわりになりたくない」と、黙ってその場を去る、という選択肢はあるかもしれませんが、「第一発見者だから疑われる」と思い込んで、死体を隠したり普通しませんよね。現金を締める仕事を担当している以上、黙ってその場を去る、という選択肢はありません。「第一発見者」として、上司に正確に状況を報告し、事実は事実として記録しておくことが大切です。
「まず第一発見者を疑え」というのは、捜査する側からするとアリかもしれませんが、ここで、自分の責任かも、と考えすぎて、結果的に事実を隠蔽することがあってはいけません。本当の「犯人」(実は単純なミスというオチも大いにあります)が現れた時、証拠隠滅の罪が発覚することになってしまいますよ。
「お金が合わない」を防ぐために
■ 小銭は余裕を持って多めに精算の時、小銭がなくて社員にお釣りをもらう。これが結構間違いの元になります。社員も自分の財布に十分小銭があるわけではなく、「あとで」などと言ってるうちに、仕事に追われて忘れられたり、おつりを間違えたり。
精算額とぴったりの額を渡せるよう、小銭は余裕を持って用意しておきましょう。小銭が多いと数えるのは面倒だし、数え間違いも多くなるかもしれませんが、金種表を使うなど、自分の工夫で防げます。こちらを優先しましょう。
■ 金庫におつりを戻す時は数えてから
買い物の時、大きな金額を持って出て、おつりを貰うことがあります。帰ってきておつりを金庫に戻す時は、必ず数えてからにしましょう。当たり前のことですが、忙しいとやってしまいがち。気をつけましょうね。
■「領収書」は「現金」と同じ
「領収書が見当たらない!」大捜索の末見つかれば良いですが、領収書が無いことで、出金の事実自体に気づかなかったら大変です。領収書は現金と同じ。他の仕事の手を止めてでも、所定の場所に保管しましょう。
■ 現金の締めは早めに取り掛かる
1日の入出金を全て終えてからお金を締めたい。そのため現金の締め作業にとりかかるのは、遅い時間になってしまいがち。勤務時間内に、何事もなく終わればいいですが、「お金が合わない」とわかった時、今日の入出金に関係ある社員に確認を取ろうにも、帰った後だとどうしようもありません。
また自分も、上司もまわりの社員も、いつ終わるかもわからない確認作業で残業となると、集中力は落ちます。早めに取り掛かりましょう。とはいえこれは自分だけで実行するのは難しいです。経費の精算や買い物は「3時まで」など時間を決めて、徹底してもらうことも必要です。
■「現金」の入出金を極力減らす
「現金」での入出金を減らすことができれば、数え間違いも手間も減ります。保管しておかなければいけない現金の額も少なくてすみます。携帯電話の使用料など、口座振替にできるものは極力手続きするなど、減らすことのできる方法を考えてみましょう。コンビニ払いの納付書なども、インターネットバンキングを通じて払えるものもありますよ。
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