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認定調査の判断基準はなぜ変わったか(2ページ目)

2009年4月から、要介護認定調査の項目数は82項目から74項目に削減。さらには、判断基準も大きく変更になりました。なぜこれだけ大きく変更したのか。厚生労働省に取材しました。

執筆者:宮下 公美子

必要な情報はすべて書き込んで欲しい

なにしろ、認定調査員のテキストを見ると、「特記事項の例」は1つの項目について3行ぐらい書かれているのです。書き込むべき内容をきちんと例として示したことは評価できますが、個別の状況を1項目につき3行も書いていては特記事項の紙が何枚になることか。

これについて鈴木氏は、「テキストに書かれているのはあくまでも例。すべての項目の特記が必要とは考えられず、膨大な量にはならない」と言います。しかし、私が認定調査員をしていたときには、ポイントを絞って書いても、1枚の特記事項用紙のすべての行が埋まるほど書くと、「書き込みすぎ! こんなに書いたら認定審査会委員に読んでもらえないから、もっと少なくして」と言われていたのです(詳しくはガイド記事「介護保険認定調査員って知っていますか?」を読んでみて)。

もちろん、私の調査員としての技量の問題もあったと思いますが、審査会で介護の手間が読み取れるようにしっかり書けば、どうしても量は増えるのではないでしょうか。特記の量が増えると認定審査会委員の負担が増え、十分読んでもらえないおそれがあるのではないか、と言うと、「必要な情報であれば、枚数が増えてもしっかり書いてほしい」と鈴木氏は言います。

しかし、そもそも今回の認定調査の見直しは、調査員や審査員、事務局の負担軽減も目的の一つだったはず。これでは、特記事項を書き込む認定調査員の負担も、審査員の負担もかえって増えるのではないか、と聞いてみました。すると鈴木氏はこう言います。

「昨年、いくつかの自治体の認定審査会に同席し、認定調査票も見てみたが、特記事項に『歩行の介助に非常に手間がかかっている』というような漠然とした内容が書かれている調査票が少なくなかった。こうした特記事項をもとに審査会で一次判定変更の判断をしていたから、審査員には負担であったと思うし、変更の判断に自治体によるバラツキが出ていた。

今後は、ポイントを絞って必要なことを書き込んでもらうのだから、変更の判断がしやすくなり、審査員の負担は増えるとは言えない。また、認定調査員も項目が8項目減ったことで負担はある程度軽減されている。特記事項については、これまでは介護の手間と能力等を勘案した推測の両方を記載するよう求めており、分かりにくかった。そこで、介護の手間のみに絞って記載してもらうよう定めた。だから今後は調査員にはきちんと書いてもらえると考えている。書き込む量や負担が増えるかどうかは、今後、実際を見てみないと判断できない」。

確かにそう聞けば、調査員は特記事項を以前よりは整理して書きやすくなるように思います。それでも、1枚に収まるのかどうか。特記事項が2枚も3枚にもわたったとしたら、1回の審査会で30人分もの認定資料を渡される審査会委員は、すみずみまで読んでくれるのでしょうか。その負担を考えると、不安はぬぐえません。

前述の通り、ふだんできないことも、認定調査の時にできれば「できる」になってしまうのです。ふだんの状況が書かれた特記事項が読み落とされたら、認定が軽く出るのは間違いありません。

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