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日中オムツゼロの実現で給与アップ?(3ページ目)

施設で入所者のオムツ使用率を30%以下にしようという取り組み、「おむつアンダー30」。東京・世田谷区立きたざわ苑の「日中オムツゼロ」の取り組みを振り返り、その意義と現実的なメリットを考えてみました。

執筆者:宮下 公美子

日中オムツゼロ実現で給与をアップできる?

きたざわ苑での報告会で基調講演を行った竹内教授から、非常に興味深い話がありました。

竹内教授
「オムツ使用率が70%でも1年かけて取り組めば10%以下にできる。経費削減効果も大きい」と竹内教授
老施協の「介護力向上講習会」に参加した100あまりの特別養護老人ホームに、年間のオムツ代を計算してもらったそうです。すると、もっともオムツ代が高かったホームは、1人当たり月平均1万1166円。これに対し、もっともオムツ代が少なかったホームでは、1人当たり月平均1076円。その差は、1人当たり月平均1万90円。

竹内教授は、もっともおむつ代が高かったホームが、最も少なかったホーム程度までおむつ代を削減したとして、削減できたオムツ代を職員の給与に回したらいくら給与が上がるかを試算したそうです。

入所70名、ショートステイ10名、職員60名のホームとして、
削減分10090円×入所者80名×12ヶ月=968万6400円
968万6400円÷職員60名=年間16万1440円
16万1440円÷15ヶ月(12ヶ月+ボーナス分3ヶ月)=1万762円
なんと、月約1万円の給与アップが実現できるというのです。

オムツ代だけでなく、下剤を廃止すると、薬剤費も削減できます。
竹内教授によれば、過去、下剤を廃止して削減できた分の薬剤費は手当に回そうと施設長が決断し、2週間で14万円の薬剤費を削減。夜勤手当が1回500円アップしたという介護老人保健施設もあったそうです。

竹内教授は「今回改定で介護報酬アップが決まったが、自分たちで自分たちの給与を上げる財源を稼ぎ出すという発想もあっていいのではないか」と話していました。確かに、削減した分が自分の給与に反映されると思えば、取り組む意欲も高まりそうです。施設経営者には、職員の処遇向上と介護の質の向上のために、ぜひこうした視点をもってほしいと思います。

前ページで、きたざわ苑は施設長の強い決意があったから、人員配置も手厚くした、と書きました。手厚い人員配置は、容易に実現できることではありません。しかし、そこであきらめないでいただきたいのです。全員のオムツを一斉にはずし、日中オムツゼロにするには手厚い人員配置が必要かもしれません。しかし、数人ずつの入所者のオムツはずしに取り組んでいくことは、方法論さえわかればできるのではないでしょうか。

人手不足で疲れ切り、前向きな取り組みをする意欲が持ちにくい職場もあると思います。しかし、発想を転換し、少しずつでも取り組んでいくことで少しずつケアを変えていくことはできると思います。

どうぞみなさんも、きたざわ苑の取り組みから、自分たちに何ができるかを考えてみてください。

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