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【報告】離職率2割超は組織崩壊の始まり(3ページ目)

2007年10月、国際福祉機器展でのふくしのスキルアップ講座「財務諸表から見た福祉施設の課題-給与水準は保てるか-」に参加しました。福祉施設は組織存続のために何をすべきか。厳しい話を聞いてきました。

執筆者:宮下 公美子

人材育成には今すぐ始めても10年かかる

問題なのは、職員の今後のキャリアパスを、上司や施設長が話せないこと。だから人がついてこないのだ、と田中氏は言います。必要以上の利益を残し、無目的にお金を貯めているから、私腹を肥やすものが出てきたり、ムダな投資をしたりする。そんなことをするぐらいなら、利益配分するべきだ、とのこと。また、給与体系を明確化し、何をすればいくらもらえるのか、職員にわかりやすくするべきだとも話していました。

自身が理事長である中辻氏の話はさらに具体的。志望率を上げるには、法人としての理念を掲げ、それを実現できる組織を作ること。入職2,3年目にモデルとなる職員がおり、その職員を指導できる主任がいるというように、階層がなくては人は育たない、という話には非常に納得しました。

先日、社会福祉士会の研修で会ったハローワークのキャリアアドバイザーのかたが話していたことと非常に重なるからです。つまり、「福祉の職場でよくあるのは、介護福祉士有資格の若い主任より、現場で長く働いているパートの職員の方が発言力があること。そういう職場では、主任の指示ややり方をパート職員が否定するなど、命令系統がはっきりしない。すると、新人は誰の言うことを聞けばいいのかわからなくなり、混乱する。こうしたことから、離職する人も多い」ということです。

これはまさに、しっかりした階層がないために起こる問題です。中辻氏は、人材を育成してしっかりした階層を作るには10年かかる、と言います。「人材育成は待ったなし。今、ここで話を聞いた法人のかたは、帰ったらすぐに人材育成を始めないと間に合いませんよ」。中辻氏はそう呼びかけていました。

介護現場の離職の問題は、急速に深刻化しています。みんなが本気になって改善していかないと、日本の介護は本当に崩壊してしまうかもしれない。そんなうそ寒い気持ちになって会場を後にしました。

非常に明確な理念を持ち、話も明快な中辻氏の法人のもとには、全国から見学者が訪れ、給与体系を教えてほしいなど様々な問い合わせがあるそうです。この日も、自法人の給与水準についての話もありました。四年制大卒の社会福祉士の初任給は19万7000円。専門学校卒の介護福祉士の初任給は18万4000円。夜勤手当が1万3000~4000円、住宅手当が2万円、ボーナスは年間4.5ヵ月と、ちょっと聞いたことがないような高水準です。

こうした給与水準を実現しながら法人を運営しているかたの話であるだけに、非常に納得感がありました。ちなみに、神戸の施設の新規オープンに向けて、現在、求人中だそうですから、興味のあるかたは神戸福生会に問い合わせてみてはいかがでしょうか。

みなさんも、時にはこうした講演やシンポジウムに参加してみてはいかがですか?
きっと役に立つ情報が得られますよ。

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