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堀田聰子さん・サービスの質の評価軸確立を

シリーズ記事「介護サービスの質の向上」第2弾は、東京大学社会科学研究所特任准教授・堀田聰子さん。経営者、中間管理者、介護職一人ひとり、行政、それぞれの立場で取り組んでいくべき課題について伺いました。

執筆者:宮下 公美子

「介護サービスの質の向上」をテーマにしたシリーズ記事。第1弾、「苦情を質の向上に生かす国保連の指導」では、東京都国民健康保険団体連合会の取り組みについて取材しました。第2弾の今回、話を伺ったのは、東京大学社会科学研究所特任准教授・堀田聰子さん。

堀田先生3
現在もホームヘルパーとして活動を続ける堀田さん。「だからといって現場を知っているとは言えない」という
人的資源管理が専門の堀田さんは、数多くの介護事業所や介護職への調査に基づき介護労働のあり方について研究。社会保障審議会介護給付費分科会専門委員、社会保障国民会議委員などを務め、国の様々な会議に参加しています。一方では中学生の頃からヘルパーとして活動。以来、現在も大学で教鞭を執る傍ら、週数回はヘルパーとして在宅介護にも携わっています。

そんな理論と実践、そして行政のあり方にも詳しい堀田さんに、介護サービスの質の向上や介護職の社会的地位向上のためには何が必要かについて伺いました。2回に分けて紹介します。

評価軸がないことが質のバラツキの背景にある

日頃、介護関係の取材、介護保険関係の相談業務を行っていて感じるのは、介護サービスの質に非常にバラツキがあること。そして、これが介護の仕事の社会的評価が上がっていかない原因の一つになっているようにも思います。なぜバラツキが生じるのか。まずこれについて堀田さんに伺いました。

「バラツキが生じる背景としてまず挙げられるのは、質の評価軸が確立されていないことです。海外ではケアハウスを中心に指標に関する研究がある程度進んでいます。サービス提供体制、管理体制、職員の属性、研修、サービスの利便性、事故・緊急時対応、情報提供・苦情処理、事業計画の策定など指標の組み合わせはいろいろ。利用者や家族も、提供者も納得できるような指標があれば、サービスは自然とそこに向かっていくと思うんです」

質の指標がない現状では、事業者はそれぞれが考える「質の高さ」を目指し、漠然とした努力を続けるしかありません。また、質を測る指標がないために、介護報酬が必ずしも介護の質を反映するとは限らない現状は、利用者にとっては納得しにくく、良いサービスも育ちにくくなっている可能性もあると堀田さんは指摘します。

「例えばレストランで高いお金を払ってもいいと思うのは、料理がおいしい、その空間が好きだからですよね。シェフにどれほど経験があろうと、サービススタッフがすばらしい資格を持っていようと、出される料理がおいしくなければ、また楽しく食事ができなければ、高いお金は払いたくない。ところが今回の報酬改定では、経験豊富で資格をもったスタッフがたくさんいるレストランには、味や快適さを問わず高い収入が保障されるということにもなりうるのです」

堀田さんも専門委員として参加していた、厚生労働省社会保障審議会介護給付費分科会が2009年12月に発表した「平成21年度介護報酬改定に関する審議報告」には、「今後の方向性」として「介護サービスの質の評価が可能と考えられる指標について、検討を行うこと」が明記されました。

「今回の介護報酬改定は制度改正を伴っていません。重要なのは審議報告の最後、『今後の方向性』の部分です。今回の改定は、過渡的なものととらえる必要があると思っています。今後、利用者、家族、事業者、介護職など、いろいろな立場の方々が対話をしながら、質を評価できる指標を考え、質の高いサービスを効果的に提供していく知恵を絞っていくことが非常に重要です」

どういう指標で質を計られたら納得できるのか。適切な指標をつくっていくために、みなさんにも、ぜひ考えてみてほしいと思います。

こんな指標はどうかというアイデアがありましたら、ぜひこちらに書き込んでください。

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