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堀田聰子さん・サービスの質の評価軸確立を(3ページ目)

シリーズ記事「介護サービスの質の向上」第2弾は、東京大学社会科学研究所特任准教授・堀田聰子さん。経営者、中間管理者、介護職一人ひとり、行政、それぞれの立場で取り組んでいくべき課題について伺いました。

執筆者:宮下 公美子


「職員が大事」というメッセージを送り続ける

経営者のあり方として、もうひとつ挙げられたポイントはコミュニケーション。
離職理由としてしばしば挙げられる人間関係には、コミュニケーションの問題が大きく影響します。職員間のコミュニケーションが十分に図れている職場は、働きやすいというのはよく言われますが、経営トップや現場の管理者から職員への働きかけも非常に大切だと堀田さんは言います。

「介護の仕事に限らず、誰でもみんなどこかで自分を見ていてもらいたいものです。まず、経営者が事業所を歩くこと。『最近どう?』と職員に声をかけて、話を聞く。それだけでも職員は、自分たちのことを考えてくれている、と感じるはずです。私自身をちゃんと見てくれている、私は一人ではないと感じてもらうことは、仕事への動機づけを高める前提になります。だから経営者は、意識的に『質の高いサービスの提供のためにも、職員のみなさんを大切にしたい』というメッセージを送り続け、目を配り続けることが必要だと思います」

堀田さんはまた、一見、意識が高くないと感じられる層の声にも耳を傾ける必要がある、と言います。

「どの仕事でも、仕事に対する意識にはバラツキがあります。それは介護職でも同様かもしれません。でも、経営者から見れば意識があまり高くないと感じられる人たちであっても、介護という、決して楽ではない仕事にとどまっている理由が必ずあります。働きがいを求めてこの仕事に就く人たち。その働きがいが何なのか、なぜこの仕事を続けているのか、さらに耳を傾けて、それに報いていかなくてはいけない。一人ひとりのやりがいに耳を傾けることが、辞めない職場作り、働きやすい職場作りの第一歩になると思います」

現場の管理者を支援し、育成する仕組み作りを

魅力ある職場作りに向けて、忘れてはならないのは経営者に加えて現場の管理者(主任やリーダー、訪問介護ではサービス提供責任者)だと堀田さんは言います。

「経営者のあり方は非常に重要。でも、それを現場に伝えていくのは、また、日々職員を見続けていくのは、現場の管理者です。現場の管理者の人事管理能力は、職員の定着や能力向上に大きな影響を及ぼすことがわかっています。しかし、膨大な事務作業や直接介護の業務、調整・・・と仕事が集中して疲れている管理者も少なくありません。

職員一人ひとりが働きやすい職場を作るには、まずは現場の管理者をどう育てるか、この層がしっかり活躍できる職場のあり方を考えていく必要があります。彼らが働きやすい人員配置、仕事分担、仕事の進め方になっているのかどうか。各事業所でもう一度振り返ってほしい。

とはいえ、各事業所で検討するのは難しい面もあります。であれば、地域でこの層のネットワークを作ったり、業界団体の中でこの層を育てる仕組みを考えるという方法もある。現場管理者のセミナーでグループワークをやると、みなさん、堰を切ったように話すんですよね。彼らが交流できる機会を増やしていくだけでも、解消されるものがある。共有できるノウハウも少なくないと思います。

また、行政は現場の管理者の計画的な育成と継続的な能力向上、能力発揮をどう支援できるか、さらに検討を重ねる必要があります。介護事業の経営モデルに加えて、雇用管理のモデルについても、もっと収集、普及していく余地があるかもしれません」

※後編では、介護職同士が語り合うことの意味や他業界からの人材受け入れ、キャリアアップの方法などについての堀田さんのお話を紹介します。
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