無知・無関心が管理費の不正を招く
皆さんは自宅マンションの管理費等がいくらか即答できますか?恐らく、ほとんどの方が問題なく答えられるでしょう。では、そのうち「管理費」と「修繕積立金」の額(内訳)がそれぞれいくらだか、正確に答えられますか?さらに、支払った管理費が「何に」「いくら」使われているか、その使途を把握していますか?

シリーズで「管理組合のマネープラン」についてお伝えしていますが、第3回目の今回は管理組合会計の仕組みを概観し、その中で特に重要となる管理費と駐車場使用料の“密接な関係”に言及してまいります。

管理組合の資金を不正流用 管理会社が自己破産


今から2年半前に、このような出来事が実際にありました。平15年9月、マンション管理会社の東洋ビル管理(東京都中野区 昭和39年創業)が東京地裁に自己破産の申し立てを行い、事実上の破たんをしましたが、調べてみると同社は経営難のあまり、受託管理組合の管理費等を自社の資金繰りに充てていたことが判明しました。つまり、管理業務を請け負っている管理組合の管理費や修繕積立金を「不正流用」していたのです。負債総額は約7億円におよび、同社に委託していた68管理組合の中には、流用された資金の一部が戻らない事態も起こりました。

言うまでもなく、管理会社のずさんな経営に問題があったことは間違いありませんが、一方で、不正流用を見抜けなかった管理組合にも原因があるといえます。日常管理業務のすべてを「委託」ではなく「依存」してしまった結果、まんまと管理会社にしてやられた格好です。冒頭で、管理費等の使途を把握しているかどうか質問を投げかけたのも、「管理会社に任せておけば安心」といった“迷信”を払しょくしてもらいたいからです。こうした事例はごく一部の管理会社による愚行と考えられますが、マンション管理の主体は管理組合であることを再認識し、「自己管理」「自己責任」の徹底を怠らないよう心がけてもらいたいと思います。

管理費は「フロー」 修繕積立金は「ストック」


そこで今一度、マンション会計の基礎となる「管理組合の収支」について簡単に復習しておきましょう。管理組合は事業法人(いわゆる企業)のように営利を追求する団体ではありませんので、管理組合会計の性格は「公益法人会計」に近くなっています。しかし、会計処理上は「企業会計」による手法や考え方を取り入れており、管理組合の収入と支出には下表のような項目があります。

<管理組合の収入・支出科目(一例)>
収入科目 1.管理費 建物共用部分や敷地・附属施設の管理を行なうための諸費用に充てるために徴収される費用
 2.修繕積立金 周期的かつ計画的に行なう大規模な修繕工事に備える準備金として徴収される費用
 3.各種使用料 駐車場・駐輪場・専用庭・共用施設など
 4.その他収入 預金利息・保険の配当金・雑収入など
支出科目 1.管理員業務費 管理員の人件費や管理事務所の消耗品費など
 2.清掃業務費 共用部分の日常および定期清掃費
 3.設備管理業務費 電気・消防・給排水など各設備の保守点検費
 4.管理組合運営費 総会や理事会開催費・役員活動費など
 5.管理委託手数料 委託管理会社への報酬
 6.水道光熱費 
 7.損害保険 共用部分にかかる火災保険などの保険料

収入の2大柱は「管理費収入」および「修繕積立金収入」ですが、両者の資金的性格はまったく異なり、管理費は“フロー”、積立金は“ストック”の関係にあります。本シリーズの根本テーマである「管理組合の財政問題」は、管理費あるいは修繕積立金の不足が原因となって起こりますが、上表3番目の各種使用料、とりわけ駐車場使用料とも密接に絡んできます。

管理費を安くみせる「カラクリ」は、駐車場使用料にあり


どういうことかと言いますと、たとえばご自宅の管理費が10000円、修繕積立金が6000円、またマイカーを所有し、敷地内駐車場の使用料が1万2000円かかるとします。一般的なマンションでは、管理組合会計の収入口は「管理費会計」と「修繕積立金(特別修繕費)会計」の2本だけで、通常は「駐車場会計」などありません。そこで、駐車場使用料をどちらの会計口として処理するかによって、まさに管理組合の財政問題に影響を与えることになります。

もし、この駐車場収入が修繕積立金会計へ充当されていれば、マンションの将来的な維持修繕に対する非常に大きな貯蓄となります。このケースでは、月々6000円の修繕積立金のほかに1万2000円がプラスされ、実質的に合計で毎月1万8000円を積み立てていくことになります。ところが、もし駐車場使用料がすべて管理費会計へ回っていたらどうなりますか?毎月のランニングコストが2万2000円もしている計算になります。

※敷地内駐車場が全世帯分用意されていないマンションも多く、また、マイカーを所有しない居住者もいますので、ここではあくまで「考え方」をお伝えしているものとご理解下さい。


「こうした発想を“逆手”にとり、意識的に管理費を低めに設定して、マンション検討者への購入意欲をあおる戦略を取っているデベロッパーもいる(マンション管理コンサルタント会社 シーアイピーの須藤氏)」ようで、単純に管理費や修繕積立金の「額面金額」だけで適正額は判断できないことが分かります。管理組合の財政状況を把握するには管理組合会計の全体像をつかみ、「ストック」および「フロー」の両面からキャッシュ・フロー(管理組合の収支)を見ることが欠かせません。

委託管理会社に管理費等を不正流用されるような管理組合にならないためにも、マンション会計に対する「無知」「無関心」の改善が最大の防衛策となるのです。


<お知らせ>
毎回、情報提供いただいている(株)シーアイピー様のご好意で、本コラムの読者限定で「管理費等の内容チェック」を無料で行なってくれるそうです。ご興味・ご関心のある管理組合様は同社ホームページより直接、お問い合せ下さい。
株式会社シーアイピー


【関連コラム】駐車場使用料「タダ」は損か得か?

【シリーズ】管理組合のマネープラン
1.マンション管理運営に影を落とす財政問題
2.企業の「思惑」で決まる修繕積立金の“裏”事情
3.「無知・無関心」による管理費の“不正”流用(本コラム)
4.修繕計画を自社の「売上表」と見る管理会社
5.管理組合と管理会社の「格差」を埋めろ!!
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。