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ついにストック数が100万戸を超えた築30年以上のマンション

いよいよ今年4月から消費税率が8%へ引き上げられます。改めて、今、なぜ増税が必要なのか?―― 将来世代への負担の先送りを軽減し、全世代対応型の安定した社会保障制度を目指すべく、社会保障の安定・充実化と財政健全化を同時達成させるための安定財源の確保が必要だからです。

日本は1960年代には1人の老人を約9人で支える「胴上げ型」の社会でしたが、今や3人弱で1人の老人を支える「騎馬戦型」になっています。そして、2050年には1人が1人を支える「肩車型」になると予想されています。ご存じ、わが国の高齢化率は24.1%(2012年10月現在)。およそ4人に1人が65歳以上です。こうした世界に類を見ないほどのスピードで進展する高齢化が社会保障制度を機能不全へと導いています。

実は、こうした高齢化の波は分譲マンション市場でも起こっており、国土交通省の「マンション総合調査(2008年)」によると、分譲マンションに住む世帯主の39.4%が60歳以上に達しています。まさに「社会の縮図」ともいえる状況が、分譲マンションを取り巻く環境でも現実のものになっています。

同時に建物の老朽化も深刻で、全国のマンションストック数およそ590万戸(2012年末)のうち、100万戸強が築30年を超えています。建築基準法が改正され、現在の新耐震基準が適用されるようになったのが今から33年前の1981年です。このことから分かるように、築30年超のマンションは設備面の老朽化だけでなく、耐震性能面でも脆弱性(旧耐震)を内包しています。切迫性が高まる首都直下地震や南海トラフ巨大地震に対する構造耐力が十分とはいえないのです。

築30年超のマンション 「(検討も含め)建て替えが必要」との回答は12.1% 

そこで、対応策として考えられるのが、(1)耐震補強工事の実施による延命、(2)マンションの建て替え ―― ですが、どちらも理想と現実には大きな乖離(かいり)が生じています。

国民の防災意識の現状を把握し、防災意識の向上を図るべく、内閣府が2010年に実施した「防災に関する特別世論調査」の結果を見ると、調査対象者の22.1%が「必要性を実感できないから」と耐震補強工事に否定的です。私ガイドは驚きを隠せません(図表1)。

【図表1】耐震補強工事を実施しない理由 (複数回答)
  • お金がかかるから……………………………………………………50.6%
  • 必要性を実感できないから…………………………………………22.1%
  • 集合住宅や借家などに住んでおり、自分だけでは判断できら……21.1%
  • 効果があるか不明だから  …………………………………………14.2%
  • どうやって着手・施工したらいいか分からない……………………10.2%
  • 面倒だから …………………………………………………………6.7%
  • 見た目が悪くなるから………………………………………………1.2%

また、内閣府と法務省、そして国土交通省によって共同で行われた、築30年超のマンションの管理組合、ならびに管理会社・建て替え事業者に対するアンケート結果(2009年)でも、「建て替えが必要と感じている」「そろそろ建て替えの検討も必要と感じ始めている」の合計はわずか12.1%。東日本大震災が発生する前のデータではありますが、マンションの将来に対する居住者の意識も関心も低いことが数字になって表れています(図表2)。

【図表2】区分所有者の建て替えに対する意識
  • 建て替えが必要と感じている ………………………………………………5.5%
  • そろそろ建て替えの検討も必要と感じ始めている…………………………6.6%
  • いずれは建て替えが必要かもしれないが、当面は修繕でいい …………50.6%
  • いずれは建て替えが必要かもしれないが、当面は現状維持でいい ……14.8%
  • 建て替えの必要性は感じない………………………………………………9.3%
  • その他・関心ない・無回答…………………………………………………13.2%

とはいえ、分譲マンションは私有財産ですので、行政がその使用状況や管理状態にまで口を挟むのは行き過ぎた行為と見なされます。財産権に抵触しかねません。しかし、すべて管理組合任せでは「手遅れ」になる心配もあることから、管理組合の自治活動に過剰関与しない範囲で、政府が高経年マンションに対する具体的な対応策を模索・検討し始めました。

次ページでは、老朽化マンションの再生促進策として俎上(そじょう)に挙がっている「敷地売却制度」の概要をご説明します。