団体信用生命保険(団信)がおりる場合、おりない場合を把握しよう

近年、マイホーム購入において「資産価値」に重きを置いた物件選択が基本セオリーとして意識されるようになりました。「高付加価値」=「値崩れしない」という考え方のもと、たとえ定住するつもりでも投資的な視点を加味し、物件の「売りやすさ」「貸しやすさ」を優先順位の上位に持ってくる傾向が、今般、顕著に見られます。

このように目先(入口)だけではなく、将来まで視野に入れた住宅の投資戦術を「出口戦略」と呼びますが、出口戦略は資金計画においても重要となります。住宅ローンは返済期間が20年~30年と長期になるだけに、その間に何が起こるか分かりません。病気や事故など、不測の事態も十分に想定されます。将来に対するリスクヘッジが求められるのです。

団体信用生命保険(団信)とは?

そこで登場するのが団体信用生命保険(団信)です。団体信用生命保険とは、不幸にして住宅ローンの借入者が死亡、身体障害、疾病などにより返済が不能になったとしても、団信に加入していれば生命保険会社が残債を保険金で代位弁済してくれます。以後、返済し続ける必要はありません。

ただ、いかなる場合でも保険金が支払われるわけではなく、支払事由に該当しないと債務は弁済されません。はたして、どのような場合が支払事由に該当し、どのような場合が該当しないのか?―― 本稿では、民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供するフラット35の「新機構団信」を取り上げ、支払事由についての具体例を紹介します。


「高度障害保障」から「身体障害保障」へと保障内容が変更される

身体障害者マークの写真

新機構団信では、死亡または身体障害状態になると保険金が支払われるようになった。これまでの高度障害状態になっても保険金は支払われない。


2017年10月の申込み受付分からフラット35と団体信用生命保険(団信)が1つになり、団信付きの住宅ローンとなりました。これに伴い団信の名称が「新機構団信」となり、保険金の支払事由が大きく変更されました。

【変更前の支払事由】
借入者が、死亡または所定の「高度障害」状態になった場合

【変更後の支払事由】
借入者が、死亡または所定の「身体障害」状態になった場合

新機構団信による「身体障害状態」とは、身体障害者福祉法に定める障害の級別が「1級」または「2級」の障害に該当し、かつ、身体障害者手帳の交付を受けた状態を指します。具体例として住宅金融支援機構では、以下の5つのケースを紹介しています。

<身体障害の級別が1級のケースの例>
(1)心臓機能に障害があり、心臓にペースメーカーを植え込んでいるため、日常生活に極度の制限が課された状態

(2)腎臓(じんぞう)機能障害により人工透析を受けており、その結果、自己の身辺の日常生活が極度に制限された状態

<身体障害の級別が2級のケースの例>
(3)聴覚障害を発症し、両耳の聴力レベルがそれぞれ100デシベル以上となった状態

(4)右半身が麻痺し、右側の手足がほとんど機能しない状態

(5)緑内障で視力が低下し、矯正後の視力が右0.01、左0.03(両目の視力の合計が0.02~0.04)となった状態

団信付きのフラット35では借入者が上記(1)~(5)の身体障害状態になった場合、支払事由に該当するため保険金が支払われます。いずれも変更前は支払われませんでした。「高度障害状態」から「身体障害状態」へと支払事由が変更された結果、保障内容が充実することとなりました。

<参考:高度障害状態とは>
高度傷害状態とは、以下の状態の場合を指しました。
  1. 両眼の視力を全く永久に失ったもの
  2. 言語またはそしゃくの機能を全く永久に失ったもの
  3. 中枢神経系または精神に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの
  4. 胸腹部臓器に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの
  5. 両上肢とも、手関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
  6. 両下肢とも、足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
  7. 1上肢を手関節以上で失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
  8. 1上肢の用を全く永久に失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったもの



介護保険制度の「要介護2以上」でも保険金が支払われる

さらに、「がん」「急性心筋梗塞」「脳卒中」を支払事由に加えた3大疾病付きの機構団信では、2017年10月受付分から「要介護状態」が新たな支払事由に追加されました。下記いずれかの場合に保険金が支払われます。

  • 保障開始日以降の傷害または疾病を原因とした公的介護保険制度による「要介護2」から「要介護5」までのいずれかに該当していると認定されたとき
  • 保障開始日以降の傷害または疾病を原因として所定の要介護状態に該当し、該当した日を含めて180日以上、要介護状態が継続したことが医師によって診断確定されたとき

「要介護2以上」といわれても、イメージしにくいかもしれません。具体例を挙げると、次のようになります。仕事ができる状態ではないでしょう。保険金の支払事由に該当するのも、うなずけます。

  • 食事、排泄、入浴、衣服の着脱に介助が必要な状態
  • 松葉杖や手すりなどで支えても、ひとりでは歩行できない状態
  • 介護者に抱えられ、またはリフトなどの機器を用いなければ、浴槽への出入りが1人ではできない状態


保障開始日前の傷病や疾病を原因とした場合、保険金は支払われない

病院のベッド イメージ写真

保険金を受け取るには、身体障害や疾病の発症時期が保障の開始日以降であることが必要条件となる。


なお、注意点として、身体障害状態による保険金は支払事由の原因となる傷病や疾病が保障開始日以降に生じた場合に限り支払われます。すでに保障開始日前に生じている傷病や疾病を原因とした場合、保険金は支払われません。団信加入時、告知書にて告知していても支払いの対象にはなりません。

同じく、3大疾病の1つ「がん」についても、次の場合は保険金が支払われません。
  • 保障の開始日前に所定の悪性がんと診断確定されていた場合
  • 保障の開始日からその日を含めて90日以内に所定の悪性がんと診断確定された場合
  • 保障の開始日からその日を含めて90日以内に診断確定された所定の悪性がんの再発・転移などと認められる場合

その他、当然ながら保険金詐取を目的として事故を招致した場合や、反社会的勢力(暴力団など)に該当すると認められた場合、また、保障開始日から1年以内の自殺も保険金の支払い対象にはなりません。

このように細かい規定が設けられています。住宅ローン借入者に保険金の支払事由を正確に伝えようという意思の表れと解されます。新機構団信への加入に際しては、丹念に説明書を読むようにしてください。出口戦略として十分に機能するよう、契約内容の正確な理解が欠かせません。
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