マンション(共用部分)を良好に維持管理していくにはメンテナンスが不可欠ですが、中長期的な期間にまたがるだけに、適時・適切な修繕を実行するには「計画性」がなければなりません。そして、こうした修繕工事のロードマップとなるのが長期修繕計画(以下「修繕計画」とする)です。ところが、マンション管理にとって重要な修繕計画が、実は管理会社の“都合”に合わせて作成されているとしたら、読者の皆さんはどうしますか?

シリーズでお伝えしている「管理組合のマネープラン」第4回は、隠された修繕計画作成の「本音」と「建前」についてご紹介します。

17%の管理組合では長期修繕計画が作成されていない


国交省が5年に1度、分譲マンション居住者に対して行なうアンケート調査「マンション総合調査(平成15年)」によると、83%の管理組合で修繕計画を作成していることが明らかになりました。管理組合と管理会社が業務委託契約を締結する際のひな形となる「マンション標準管理委託契約書」が平成15年4月に改定され、「修繕計画(案)の作成および一定年数ごとの見直しが管理会社の基幹事務」と定められたことも奏功し、今後、修繕計画の作成割合はさらに高まっていくでしょう。しかし裏を返せば、17%の管理組合では当該計画が作成されていないことが同時に露見しており、“行き当たりばったり”の修繕工事ではマンションの未来が危惧されてなりません。

このようなマンションでは、遅かれ早かれ財政問題(積立金不足)に直面することは避けられず、いつしか窮地に追いやられることになります。「こうした財政問題について、自分たち所有者だけでは時間的にも、また、知識あるいは経験的にみても解決は容易ではありません。そこで本来、日常の管理業務を委託している管理会社の知恵を借りるのが理想ですが、実際、管理会社は財政問題について有効な手段を提供しないのが現状です」と、マンション管理コンサルタント会社「シーアイピー」の須藤社長は指摘します。

同氏はさらに、「マンション財政の内容を最も熟知しているのは、他ならぬ管理会社です。日々の出納および会計業務を通じ、管理組合の収支内容を把握していますし、(修繕計画が作成されているマンションでも)ほとんどのマンションでは修繕計画を管理会社が作成補助する関係上、長期的な収支予測を一番理解しているからです。それだけに、実は初めから何年後にいくらぐらいの不足が生じるか知っているのも管理会社なのです」と管理会社の“裏”事情を語っています。


財政不足は百害あって一利なし


前段で触れたマンション総合調査から「修繕計画の作成主体」を調べてみると、約6割が「マンション管理業者」、次いで2番目に多いのが「管理組合」の約2割となっています(円グラフ参照)。自宅マンションの構造や設備についての基本情報から、各設備や各部位の耐用年数や修繕費の概算までが算出できないと修繕計画は策定できないだけに、管理組合が自力で当該計画を作り上げるのは簡単ではありません。だからこそ、管理会社に業務を委託しているのですが、ところが「財政問題が顕在化することを知っていても、管理会社はハッキリと報告しないのです」(須藤氏)。

となると、一体何のために管理会社に報酬を払っているのか分からなくなりますが、さらに追い討ちをかけるように同氏は「こうした管理会社は、建物の劣化が目立ち始めると各世帯からの一時金の拠出や、金融機関からの借り入れによって修繕費用を工面することを提案してきます。つまり、各所有者の支出(負担)を増やすことしか頭にないのです。」

確かに、融資を受けたり、または各所有者が追加一時金を拠出すれば修繕工事は行なえますが、これではプロの提案と言えるでしょうか? もしも一時金の支出に反対の所有者(払いたくない人や払えない人)がいた場合、工事はどうなるでしょう。意見調整や説得に時間をかけていては着工のタイミングが遅れるばかりか、居住者同士の信頼関係に軋轢(あつれき)を生じることにもなりかねません。マンション内に“不協和音”が発生することは絶対に避けなければならないのです。財政不足は百害あって一利なしといえるでしょう。

修繕計画表は管理会社の「売り上げ予定表」と読み替えよ


マンション管理における会計業務がこれ程までに“骨抜き”にされることは、管理会社の「怠慢」以外の何者でもありませんが、その一方で、財政難の管理組合に借金を背負わせてまでも修繕工事を行なわせようとします。今まで“見て見ぬふり”をしてきたのだから、管理組合から指摘されるまで怠慢を継続すればいいのに、こうした意識の変化は何なのでしょうか?

管理組合が、いざ修繕工事を実施しようとした場合、組合独自の判断だけで施工業者を選定することは考えにくく、ほとんどが委託管理会社に相談を持ちかけます。持ちかけられた管理会社は専門業者を数社、紹介することになりますが、その紹介相手は(当然ながら)管理会社の息のかかった業者です。そこで、工事請負契約が成立すると「バックマージン」なるご褒美(ほうび)を受け取ることができるのです。委託管理会社が大手であれば、自社内に工事部門を有していますので、まず間違いなく自社で修繕工事を引き受けることになるでしょう。単なる紹介ではなく自社受注ができれば、工事費用(見積り金額)についても優位的な地位につけますので、より多くのマージン(利益)が期待しやすくなる仕組みです。

管理会社にとっての収入減は、毎月の定額受託業務費だけでなく、修繕工事の実施に伴う“間接的”なマージンも含まれます。「こうした現状に照らし合わせると、修繕計画表というのは管理会社の“売り上げ予定表”といっても過言ではない」と、シーアイピーの須藤社長が指摘するように、管理会社はあらゆる局面で手数料を手にしているのです。

企業が利益を追求するのは当然のことではありますが、「マンションの鉄筋量を減らす」といった間違った企業努力(=「禁じ手」)に走った前例があるだけに、くれぐれも“行き過ぎた”利益の追求には気を付けたいものです。


【シリーズ】管理組合のマネープラン
1.マンション管理運営に影を落とす財政問題
2.企業の「思惑」で決まる修繕積立金の“裏”事情
3.「無知・無関心」による管理費の“不正”流用
4.修繕計画を自社の「売上表」と見る管理会社(本コラム)
5.管理組合と管理会社の「格差」を埋めろ!!

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