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有料老人ホームの介護職にとっての魅力は?(2ページ目)

個別介助をしたい、という強い希望を持つ介護職の人たちが、有料老人ホームを目指す動きがあります。有料老人ホームのどこが魅力的に映るのか、考えてみました。

執筆者:宮下 公美子

介護職の役割は?


介護職に求められる役割も、かなり違います。介護保険施設の場合、入所しているのは全員が要介護の高齢者ですから、当然ながら介護がメイン業務。食事介助、排泄介助、入浴介助など、全員に対して必要な介護サービスをいかに不足なく提供するかがまず大切なこと。そして、さらに、それぞれに対して精神的なケア、体調の管理、見守りなどを行っていきます。

これに対して、有料老人ホームは入居者は全員が要介護者というわけではありませんから、業務の中心は生活のサポート。入居者の要望に応じて、日常生活がスムーズに行えるよう、寄り添っていくことが求められます。着替えの介助、食事の介助なども、求められれば応ずるし、見守るだけのケースもある。要介護の人であれば、最初から介助に入る場合もあるでしょう。それはすべてが個別対応になります。

ただ、人員配置に余裕の少ない有料老人ホームは、どちらかというと、介護保険施設に近い業務になりがちかもしれません。

介護職の配置が多く、また自立の入居者も多いホームであれば、入居者一人一人の要望に合わせ、ゆったりとした対応が可能です。外出に関しても、一人で出かけるという人は見送って出迎えるだけ。一緒に行く場合もあれば、頼まれて買い物をしてくる場合もある。そこで求められているのは、臨機応変な対応です。

そうした有料老人ホームでは介護の技術以上に、ホスピタリティ(もてなしの心)が求められるとも言われています。たとえば、お茶がほしいと言われたとき、介護保険施設であれば、お茶はほうじ茶と決まっていれば、ほうじ茶を出せばいい。しかし、有料老人ホームでは、煎茶がほしいと言われたら、たとえ希望しているのが1人だけであっても、それに対応することが必要になる場合もあります。

一部の介護保険施設で行われている流れ作業的な介護に失望し、個別対応のできる介護を目指して有料老人ホームへの転職を考える人も増えています。施設の都合で入所者を介護していくのではなく、入居者の都合や希望に合わせた対応をしていく。それは一見、理想的な介護のように見えます。

しかし、ノーと言わない個別対応をするには、それだけ臨機応変で多様な対応への覚悟が必要。長年、介護保険施設で働いてきた人には、とまどうことが多いとも言います。有料老人ホームで働く人からは、入居者のあまりのわがままに辟易する、という話も耳にします。特に、高額な入居一時金が必要なホームの場合、現役時代、社会的地位が高かった入居者も多く、言葉遣いから接し方まで、細やかな配慮が必要だとも言います。

また、繰り返しになりますが、人員配置が多いホームと、少ないホームでは、介護の体制、考え方にはかなりの違いがあります。さらには、新規開設当初は自立の入居者が多かったものの、年数がたつにつれて要介護者が増え、人員配置も求められる業務も大きく変わってしまった、という例もあります。そのあたりについてはきちんと情報収集をし、先を見通して、どのような有料老人ホームであれば、自分の目指す介護ができるかを、しっかり見極めていきたいものです。


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