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ドイツ介護保険から何を学ぶべきか

日独の介護保険比較記事の3回目。日本の介護保険はドイツを参考に作られましたが、大きく違う部分もあります。ドイツ介護保険との比較から、今後の日本の介護保険制度のあり方について考えます。

執筆者:宮下 公美子

ドイツ介護保険と日本の介護保険を比較する記事シリーズの3回目です。1回目は、財源、被保険者、保険料、要介護度、要介護認定調査(ドイツでは「鑑定」)、2回目は、要介護認定調査の続きと給付について、比較してみました。今回は、制度を比較した上で、日本の介護保険、介護業界の状況をどうしていくべきか、介護職はどうあるべきかについて考えます。

◆INDEX◆
1P目>>【ドイツ介護保険は補助的な支援】
2P目>>【日本の介護保険のこれからのために】
3P目>>【ドイツでは看護師と介護職の待遇は同等】

ドイツ介護保険は補助的な支援

日本とドイツの介護保険を比較してみて強く感じたのは、ドイツの介護保険は必要な介護のすべてを介護保険が担うのではなく、あくまでも補助的な支援という位置づけだということです。財源は100%保険料ですから、給付が増えれば保険料は上がっていきます。保険料は15歳以上の働いている国民全員が負担するわけですから、極端に増えれば国民に広く不満が広がるのは目に見えています。そこで、広く保険料を集め、利用できる対象も国民全員にしてあるけれど、実際に使える人、範囲は限定的、という仕組みにしたのだと思います。これは、実質本位のドイツらしい、合理的なやり方ですね。

これに対して日本は、最初に「家族だけに負担を背負わせず、介護を社会化する」という大見得を切って導入してしまったのが、ある意味、失敗だったのかもしれません。最初からドイツのように、限定的にサポートするというスタンスでスタートし、余裕があったら給付幅を広げていくというやり方をすれば、今ほど批判を浴びることもなかったでしょう。

ケアマネジャー
介護計画を立てて、サービスを調整するケアマネジャーがいることは、日本の介護保険制度の優れている点
しかし、それは結果論。
今そんなことを言っても始まりません。それに、決して日本の制度がドイツに比べて良くないわけではないと思います。軽介護者も給付対象としている点もそうですし、その軽介護者に対しての生活援助も、縛りがきつくなってきたとは言え、給付があります。また、介護度が低く出るとは言え、身体的には自立の認知症の人もある程度カバーできる制度であったことは、ドイツを大きく先んじていたと思います。そして何より、ドイツの介護保険制度にはないケアマネジャーの存在。どのような介護サービスが必要かをコーディネイトするケアマネジャーという職種を新たに作ったのは、日本の制度の非常に優れている部分だと思います。

ただ、問題は、そのケアマネジャーが本来、求められている役割を十分にできる環境にないこと。また、一部に役割を思い違いしたり、放棄したりしているケアマネジャーがいるということです。そもそもケアマネジャーという素晴らしい職種を考えついたときに、どうして独立型で十分経営が成り立つだけの介護報酬にして、居宅介護支援は必ず独立型に、という制度にしなかったのかと思います。もちろん、それだけで解決することではありませんが……。

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