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日中オムツ使用ゼロの取り組み(3ページ目)

東京・世田谷の特別養護老人ホーム、区立きたざわ苑(入所定員100名・平均要介護度3.9)では日中のオムツ使用ゼロに取り組み、2008年12月に達成。2009年2月11日に開かれたオムツゼロ達成報告会に行ってきました。

執筆者:宮下 公美子

歩行→意識改善→尿・便意回復

冒頭で紹介した95歳の女性A子さん。
きたざわ苑に入所する前、A子さんはひとりで暮らしていました。2007年7月頃に認知症が出現し、便失禁が見られるなど次第に症状が悪化。11月に部屋で倒れていたのを発見され、入院→転院→老健という経過をたどって、2008年6月にきたざわ苑に入所したとのことでした。

6月10日の入所時は直前7ヶ月間寝たきりであったため、立位も困難な状態でした。それでもオムツをはずし、2人介助でトイレへ誘導。毎日、折を見ては、立つ、歩く、という訓練を繰り返し、6月28日にはサークル歩行器+2人介助で3mの歩行が可能に。7月6日、サークル歩行器+1人介助で5m歩けるようになったころには、便意を回復。8月16日には、1人介助+サークル歩行器で90mもの歩行が可能になりました。その後、車いすの使用を中止。10月4日には、サークル歩行器を使えば、職員の介助なし(見守り)でも5m歩けるほど歩行が安定。このころには、尿意も回復しました。

10月29日にはシルバーカー+1人介助で15m、12月11日にはシルバーカーで自立して120m歩けるようになりました。きたざわ苑が設定していたA子さんの歩行改善の目標は、シルバーカーでの施設内自立歩行だったそうです。ところが予想を上回る回復により、さらに12月13日には杖歩行+1人介助で8m、12月17日には120mの歩行が可能に。そして年が明けた1月15日には、職員が見守る中、自分でシルバーカーを押して近くのコンビニまで買い物に行けるまでに回復しました。現在は、室内は杖歩行、屋外はシルバーカーで移動しています。

身体状況が回復するとともに、認知症の症状も改善しました。4種類の精神薬のうち3種類を中止。薬の中止と、歩行可能になったことによる活動量の増加で日中の意識レベルが上がり、夜間もぐっすり眠れるようになりました。また、聴覚障害はあるものの補聴器の使用により、コミュニケーションが図れるようになり、日常会話が成立するように。興奮して大声を出したり、介護を拒否したりすることはほとんどなくなり、笑顔が増えて冗談さえ言うようになったとのことでした。

薬、歩行訓練以外の取り組みとしては、1日1500mlの水分摂取と、適切な栄養量の摂取もあります。A子さんは入所時32kgだった体重が42kgに増加し、体力が回復したことも歩行の安定につながったとのこと。歩けるから食べられる、食べられるから体力がついてさらに歩ける、という好循環で劇的にADLが改善していったのだと思います。

そして、自立支援介護につながるオムツはずしにおいて、歩行能力の改善と並ぶもう一つのポイントは、下剤の廃止。看護チームが勇気を持って下剤廃止に取り組むことで、オムツはずしが実現するのです。


看護チームの下剤廃止の取り組み、きたざわ苑の取り組みについてのまとめ、オムツゼロにすることの経費削減効果については、次回の記事「オムツゼロの実現で給与アップ?」で紹介します。

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