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日中オムツ使用ゼロの取り組み(2ページ目)

東京・世田谷の特別養護老人ホーム、区立きたざわ苑(入所定員100名・平均要介護度3.9)では日中のオムツ使用ゼロに取り組み、2008年12月に達成。2009年2月11日に開かれたオムツゼロ達成報告会に行ってきました。

執筆者:宮下 公美子

寝たきり脱出は5秒のつかまり立ちから

そもそもオムツはなぜ必要なのでしょう。
尿意、便意がなく、失禁が多いから?
寝たきりで座位が保てず、トイレで座れないから?

しかし実は入所者のADLの問題だけでなく、トイレやポータブルトイレに誘導して排泄介助する手が足りないから、という介護する側の都合もあるのではないでしょうか。あるいは、「要介護5で寝たきりのかたにトイレでの排泄は無理」という思いこみも大きく影響しているように思います。

きたざわ苑での報告会の基調講演において、「介護力向上講習会」講師でもある国際医療福祉大学大学院の竹内孝仁教授から、まず「要介護5のかたには、身の回りの世話は自立できない、オムツでいい」という考えを捨てるところから始めることだ、との話がありました。確かに何ごとも「できない」「必要ない」と思っていては、実現することは不可能です。

介護職員1
報告した職員のかたは、前の職場では「オムツゼロ」「下剤廃止」と聞いてもピンと来なかった、きたざわ苑に来て実現できてうれしいと話していた
では、具体的なオムツはずしのポイントですが、きたざわ苑では、「歩行能力の改善」「下剤の廃止」「座位(トイレでの)排泄」の3つであるとしています。規則的で自然な排便を取り戻し、歩けるようになればオムツはいらない、というのです。そこで、きたざわ苑がまず取り組んだのは、歩行能力の改善でした。歩けないのは「下肢筋力の低下」のためではなく、「歩き方を忘れた」からであると考え、まずは5秒のつかまり立ちからスタートしたと言います。

立てるようになったら、今度は歩行補助具を使い、歩行練習。サークル歩行器、シルバーカー、杖など、補助具も歩行能力の改善に合わせて変えていきます。また、どの補助具を使い、何m歩けたかを毎日記録。改善の状況をしっかり把握します。歩く距離を伸ばしていくと同時に、居室内での歩行を室外に移し、食堂や廊下を歩く、そして最後は屋外での歩行にもチャレンジするなど、歩く範囲も広げていきました。

また、トイレでの自然な排便を促すために、朝起きたときに冷たい牛乳を飲んでもらったり、朝食後など決まった時間にトイレ誘導したり、ファイバーやオリゴ糖を摂取してもらったりしたとのこと。そのほか、トイレの便座に座った際、両手でつかむことで前傾しても体を支えられる補助具「ふんばるくん」を施設で制作。安心して前傾し、腹圧をかけられるようになったことから、自然排便に役立っていると言います。

冒頭で紹介したA子さんのケースは
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