マンション検定/基礎(会計編) 【解 答】
(問1) ○
管理費とは、マンションの敷地および共用部分などの管理に要する経費のことで、区分所有者は決められた金額を必ず管理組合に納入しなければならない。
その通りです。区分所有法にも「各共有者(区分所有者)は、規約に別段の定めがない限り、その持分に応じて共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する」とあります。法律で管理費の納入義務が定められているのです。しっかりと、頭に入れておきたいものです。
(問2) ×
たまたま滞納者が多数、その月に集中したため、予定通りに管理費が集まらなかった。そのため、毎月積み立てている修繕積立金を一部取り崩して、不足分を穴埋めした。
管理組合会計では、管理費収入や修繕積立金収入はその目的に応じた支出を行うべきであり、目的以外の勘定間での相互振り替えは原則として行ってはいけないとされています。なぜなら、こうしたことが常習化すると、“将来”に必要となる修繕積立金がいつまでたっても貯まらず、改修工事を行おうとした時に残高不足になる恐れがあるからです。管理費と修繕積立金は「分別管理」が重要なのです。
(問3) ×
管理会社から管理費の値上げを通告された。日常の管理業務を委託している管理会社がそう言うのだから、管理組合が値上げを拒むことは一切できない。
そのようなことはありません。いくら日常業務を全般的に任せているからといって、管理費の値上げまで管理会社に勝手にされてはたまったものではありません。そもそも、管理会社は管理組合の業務を代行しているだけの存在です。組合運営に助言はできても、決定権まで持ち合わせているわけではありません。そのため、一方的に値上げを通告されたとしても、その申し出を受け入れるかどうかは管理組合の判断(自由)となります。
(問4) ○
監事は、管理組合の業務の執行および財産の状況を監査し、その結果を総会に報告しなければならない。
企業会計同様、マンション会計にも「監査」という業務があります。そして、この業務を行うのが監事です。監事には、お金の“番人”として管理会計をチェックする義務があり、同時に、管理組合の活動全般についても執行状況を確認する役割を担います。とても重要なポストなのです。マンション管理を本格的に勉強したい方は、ご自宅マンションで監事を経験してみてはいかがでしょうか。
(問5) ○
敷地内駐車場のあるマンションの場合、当該駐車場を利用する区分所有者から徴収している駐車場使用料は、駐車場施設の維持管理に充てるほか、剰余金が発生すれば修繕積立金として積み立てるものとする。
その通りです。多くのマンションが、現実はこうした剰余金を「管理費」に充当しているのですが、理想は「修繕積立金」として積み立てることです。修繕積立金が多すぎて困ることはありません。是非、実践してみてください。
(問6) ×
「町会費」や「自治会費」といった名目の支出は、当然に管理費からねん出されるべき金銭だ。
そもそも「町会費」や「自治会費」とは、その地域の経済活動費であって、管理組合の運営とは直接的な関係はありません。マンション住民が自治会に参加しないことも許されているはずです。繰り返しますが、管理費とはマンションの敷地および共用部分などの管理に要する経費のことです。これ以外の用途として、管理費からねん出することは望ましくありません。
(問7) ×
管理費等を滞納したまま、ある区分所有者が自宅を売却してマンションから出て行ってしまった。その場合、滞納分(未収分)はすべて管理組合が補てんしなければならない。
(問1)でも触れたように、管理費や修繕積立金の支払いは区分所有者の“義務”です。この点に関し、例外は存在しません。そのため、滞納管理費(延滞債務)は常にその住戸に留保され、新しく当該住戸を買い受けた区分所有者が延滞債務を引きつながなければならないことになります。表現を変えると、管理組合は管理費等の未収分を「滞納者本人」にも「新しい区分所有者」にも請求できるのです。「逃げるが勝ち」といったことができないよう、安全網が敷かれているとお考えください。管理組合が負担する必要はありませんので、ご安心ください。
(問8) ×
マンション会計において、健全な管理組合会計であるためには、当然ながら支出(出費)は予算に対して常に大幅に下回ることが望ましい。
基礎編としては、やや難しかったかもしれません。管理組合にも「お金」の流れがある以上、マンション会計の勘定項目にも、管理費や駐車場使用料といった「収入」の勘定と、共用部分の光熱費や管理委託料といった「支出」の勘定が存在します。そして、こうしたお金の「収支」を管理・監査することがマンション会計の本旨となります。
その際、一見すると支出が予算(収入)を下回っているほうが、不足金の発生もなく好都合のように思われます。しかし、企業会計とは異なり、利益の追求を目的としないマンション会計では、予算と決算の差異は大きくならないことが望ましいのです。従って、正解は×となります。
(問9) ○
修繕積立金の負担割合は、専有部分の床面積割合で案分するのが原則だが、専有面積に関係なく管理規約で「全戸同額」とすることもできる。
その通りです。現実問題、同じマンション内で40平方メートルの部屋と70平方メートルの部屋が同額の管理費ということはあり得ませんが、法律上、専有面積で管理費の負担割合を定めなければならないという決まりはありません。管理組合独自のルールで管理費を自由に設定できるのです。そのため、「全戸同額」としても何ら問題はありません。
(問10) ×
区分所有者同様、法人成りした管理組合(管理組合法人)には固定資産税や都市計画税が毎年課税されるが、他方、法人格を有さない一般の管理組合には課税されない。
管理組合は法人化することか可能で、法人成りした管理組合を「管理組合法人」と呼びます。しかし、管理組合法人も一般の管理組合も営利を目的としない団体であるため、税制上、一部の例外を除き両者とも課税されない決まりになっています。
そもそも、固定資産税や都市計画税の対象となるマンションの敷地および建物は、いずれも区分所有者の持ち物です。管理組合が名義を持つわけではありません。従って、法人格の有無にかかわらず、本則として管理組合には固定資産税も都市計画税も課税されません。
【シリーズ】マンション検定
#1 マンション検定/基礎(法律編)
#2 マンション検定/基礎(建物・設備編)
#3 マンション検定/基礎(会計編)(本コラム)
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