近年、企業は自社の知的財産保護に躍起になっています。多大な労力と資金をかけて開発した技術を盗まれて、他社に同等の製品を発売されたり、蓄積した得意先を奪われてしまったりしたのでは、会社の存亡にも関わることだからです。

そのため、メーカーの一部では、肝心要の部分を完全なブラックボックス化することで、組み込んだソフトウエアの解析を防止したり、技術の全容を理解できている人物、ポストをあえて置かないようにするといった対策を取るとことも出てきました。

しかし、セキュリティの甘い会社では、中途で入社した人物が1週間で出社しなくなり、調べたところ、ソフトウエアのソースがすべて盗まれていたとか、退職者に重要な資料を持ち出されて業務に支障を来しているといった事件も起きているようです。

機密情報を持ち出して売却するのは、必ずしも退職者ばかりではありませんが、退職に際しては、たとえ個人の所有物であっても、持ち出しが厳しく監視されることもあります。退職するに当たっては、必ず会社に返却すべきもの、持ち出せるものを区別しておきましょう。


身分証明書、社章、名刺(自分のもの)
社員であることを証明するものは、退職後に悪用されないとも限らないということで、必ず返却が求められます。 

仕事で受け取った名刺
仕事を通じて知り合いになった人が、その後も自分にとって有益な人脈になるということはよくあること。しかし、交換した名刺は、仕事することで得たものである以上、会社の財産ですから、持ち出すことは原則としてできません。

ただ、会社としても一面識もない人物の名刺だけ置いていかれてもじゃまになるだけということもありますので、相談すれば持ち出しを認めてもらえることもあります。

私が経験したケースでは、すべての名刺をコピーしたうえで、それぞれの人物にコメントを添えて退職した人がいて、後日、そのファイルが取材先探しに大いに役だったことがあります。むしろ、ただ名刺を置いて行かれるだけでは捨てるほかなかったでしょう。

資料(書籍、雑誌、統計資料など)
仕事に活用している書籍、専門誌は、たとえ自分専用でしかないとしても、社費で購入したものは会社財産です。もちろん、自費で購入したものであれば持ち出しは可能ですが、会社のものか自分のものか区別があいまいになっている場合には、私物であることを主張しづらいケースもあるでしょう。疑われるくらいなら、あきらめるのも一手かもしれません。そうならないよう、退職を決めたら、早めに整理しておくことをお勧めします。

図面、作品類
設計図、企画書、作品その他、仕事として作り出したものの所有権は会社に属します。ソフトウエアプログラムやデータベースなども著作権の対象として保護されていますので、たとえコピーであろうと持ち出してはいけません。

プログラムの漏洩が問題になった初期の頃は、プログラムそのものは単なるデジタル信号でしかないということで、著作権侵害が認められず、フロッピーを持ち出したとする窃盗罪で訴えたという事件もありました。空のフロッピーであっても、持ち出しを疑われることになりかねません。