転職のノウハウ

転職せず、現職にとどまるべき人の特徴とは? 人材コンサルに聞いた

昨今、1つの会社で生涯勤め上げるより、転職するというのが当たり前になってきたが、「現職にとどまるべき人」というのもいる。転職で解決できること、できないことを正確に把握する必要がある。

小松 俊明

執筆者:小松 俊明

転職のノウハウ・外資転職ガイド

現職にとどまるべき人の特徴

現職にとどまるべき人の特徴

エン・ジャパンが運営する転職サイト『ミドルの転職』が、転職コンサルタント126人に実施した「転職すべき人・現職にとどまるべき人」についてのアンケート調査によると、転職コンサルタントの54%が「面談した3人に1人は現職にとどまる方がいい」と回答した。

現職にとどまるべき理由の1位は「本人の希望と市場価値とのギャップがあること」、反対に、転職すべき理由の1位は「今後やりたいことと転職理由の整合性がとれていること」だった。「現職にとどまるべき人」の特徴について、本稿ではもう少し掘り下げてみる。
 

転職では、評価や信頼が一度リセットされる

現職にとどまるか転職するか、多くの人が最初に考慮すべきポイントは「現職での蓄積」を自分でどう捉えるかということ。現状に不満があっても、その会社の中で蓄積した自らの履歴を捨てきれないときは、現職にとどまって、現状改善に向けて時間をかけて働きかけた方がいいことが多い。新しい会社に転職するということは、これまで蓄積したあらゆる履歴を一旦は消すことになるからだ。

転職を実現するにはエネルギーがいる。転職活動だけでなく、入社後も異なる環境で新しい同僚と働き、周りからの評価や信頼を新たに勝ち得るために努力しなければならない。これは簡単なことではない。新しい会社には自分の履歴が全く存在せず、全て現在から未来に向けてやり直すことになる。それがさっぱりして気持ちいいこともあれば、しんどいときもある。

もちろんそんな“蓄積”は自分の経験とスキル、能力として残っているから気にしないという人が一番強い。ある意味過去は断ち切り、いわばすべてをリセットして新しい会社でやり直すのもいいだろう。良好な社内人脈、自分が会社に貢献した実績などは新しい会社でも作ることはできる、そう思って再スタートを切ればいい。このあたりの損得勘定にこだわりがない人ほど、転職のハードルは下がる。

大企業で働いている人ほど、転職でなく社内異動でも、組織が大きいことが理由で過去の自分の会社貢献の履歴(社内人脈、前職の上司や同僚からの高評価など)があまり使えないと感じる人もいることだろう。異動先の部署に知り合いが誰もいない、自分の過去の評価は新しい異動先の部署の人はほとんど誰も知らない、というような状況は多い。そのような場合は、他社に転職することと社内で異動することにさほどの差は感じないはずだ。

逆に比較的小さな組織、いわゆる中小企業で働いている場合などは、社内のどこに異動しても自分の履歴(能力や人物評価を中心に)はつきまとい、誰もが自分を知っている。それが良い方向へ働く場合もあれば、悪い方向に働く場合もあるだろう。一度リセットしようと思えば、転職は現実的な選択になりやすいということだ。つまり、転職することで過去をリセットするという効果は、大企業で働く人よりも中小企業で働く人の方が高い。
 

現職にとどまる方がいい人の特徴は?

本来転職しない方がいい人がいるわけではない。現職にとどまる方がいい人がいるという指摘は、本人の資質の問題というよりも、転職しても現職で生じている問題が新しい転職先で解決できない可能性が高い状況を正確に把握する必要があるという意味である。

転職理由の多くが仕事内容、待遇、人間関係などへの不満であり、実際はこれらが合併症を起こした状態であることが多い。つまり、この問題を解決できることが、転職することの意味である。

転職がすべての悩みを解決してくれるわけではなく、むしろ現職よりもリスクが高いことが多いので、あくまでも転職は慎重に考えるのがいいだろう。現職にとどまって、時間をかけて現状の問題解決にベストを尽くした後で、それから転職を考えても決して遅くはない。転職してから成功する人の多くは、現職で問題解決にベストを尽くすステップを必ず踏んでいる。解決すべく動いてみたものの、状況が改善しない場合の次の手段として、転職が出てくる。このステップを飛ばして転職してしまうと、転職先でもまた現職と同じ問題に直面し、転職を繰り返すことにもなるから注意が必要である。

ちなみに、仕事内容、待遇、人間関係の3つのうち、仕事内容が理由で転職を希望する場合で、キャリアのショートカットを望む人や、専門性をつけられる環境に行きたい人などは、現職にとどまらず、環境を変えることで成功する人が多い。

待遇が転職理由の場合は、「現職にとどまる方がいい人」というのが出てくる。具体的には、転職先でパフォーマンスを上げることに自信が持てない人だ。待遇を良くしたい一心で、目先の待遇だけで飛びつかないことが重要である。最初に提示された待遇が良くても、転職先で活躍できなければその後の待遇は伸びていかないし、それを理由にまた転職を繰り返すことにもつながる。
 

転職コンサルタントから評価されない人は現職にとどまるべきなのか?

最後に、転職コンサルタントに相談して転職活動をする際、転職コンサルタントからの評価が思わしくないからと言って、転職をせずに現職にとどまる方がいいわけではないということは、ここで強調しておきたい。

転職希望者に寄り添わず、まるで面接官のように上から目線で転職希望者の市場価値を判断しようとする転職コンサルタントが少なからずいることも現実だ。このような転職コンサルタントに当たってしまうと、転職希望者は、相手からの厳しい視線に自己防衛的になり、必要以上に自己アピールを強めてしまうことがある。

転職希望者の強みを伸ばし、弱みをサポートするためにまず転職コンサルタントがすべきことは、転職希望者との信頼関係を築くことである。それにもかかわらず信頼が不十分な状態で、転職コンサルタントが転職希望者の要望を聞き出そうとすれば、本人の市場価値とギャップのある希望(一種の高望み)をリクエストしてしまうことがある。転職希望者が本音で自分の現状を語りにくい状況を、転職コンサルタントが作ってしまっているのだ。

転職コンサルタントにとって、転職希望者の市場価値を見極めることは重要な職務のひとつであるが、相手との信頼関係の構築の妨げになるようなアプローチをするというのは明らかに実力不足である。

転職コンサルタントが回答した、現職にとどまるべき人の特徴で1位となっていた、「本人の希望と市場価値とのギャップがあること」。これは、転職コンサルタントが問題でギャップがあるように捉えてしまっている場合もあるということだ。

本来転職サポートをするのが仕事であるはずの転職コンサルタントから不当な評価をされたことがきっかけで、本人の転職活動が難しくなってしまっている人も少なくない。転職コンサルタントからの評価が低かったからといって、自信をなくし、転職を思いとどまる必要はない。
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