転職のノウハウ

「優秀」だけではNG。職場での居心地を良くしたいなら、「替えのきかない人材」になるべき理由

特別な経験、知識、技術、人脈を使って仕事をして、その人でなければできない貢献をしている人は、会社にとって「替えのきかない人材」である。半面、どんなに能力的に優秀な人物でも、会社から見れば他の人で簡単に替えがきく場合もあり、優秀なのに会社の評価が低く転職を繰り返す人もいる。

小松 俊明

執筆者:小松 俊明

転職のノウハウ・外資転職ガイド

「優秀」だけに留まらず、「替えのきかない人材」になるには?

「優秀」だけに留まらず、「替えのきかない人材」になるには?

会社にとって「替えのきかない人材」になること、これが会社での居心地を良くするためのカギである。

自分が会社に貢献していることが実感できるだけでなく、貢献度を会社にも正しく認識されている状態があるからだ。「替えのきかない人材」になれば、あなたの満足度は高く、この会社は居心地がいいと感じているに違いない。そのポジションを獲得できれば、会社を辞める理由は見つからなくなる。実際、「替えのきかない人材」とみなされた人に対して、企業は通常の慣例とは異なる特別待遇をすることもある。

社員が抱える悩みの多くは、まだ「替えのきかない人材」になれていないからである。例えば、会社に貢献できていないこと、または会社から自分の貢献度が正当に評価されてないことなど、このどちらか、もしくは両方が十分でない場合、居心地が悪くなって転職を考えるようになるのだ。つまり、業界大手、有名企業など、待遇のいい会社に入っても、「替えのきかない人材」のポジションを獲得できなければ、遅かれ早かれその会社を辞めるか、不満を抱えたまま、くすぶった状態で会社に滞留し続けることになる。

ただ、優秀な人材は「替えのきかない人材」になりやすいが、「優秀な人材=替えのきかない人材」とは限らない。「優秀なだけ」では「替えのきかない人材」になれないとすれば、あと何が必要なのだろうか。

「替えのきかない人材」になるための条件とは

替えのきかない人材は「会社に貢献していること」が前提だが、優秀な人、会社に貢献しているだけの人では、正直なところ会社がその気になれば転職市場から替わりの人を見つけることができるだろう。では替えのきかない状態とは何だろうか。

1つ目は、その人にしかできないことがあるということだ。他の人が代わりにやることができないという意味でもある。その人に特別な高い能力があり、その人がやらなければ他に同じような成果を出せる人がいないという状況などがこれだ。

2つ目の事例としては、その人の経験や実績、そして人格などの人物像に対する周りの信頼が高く、その人だから周りからの協力体制が維持できているケースだ。この場合、どんな優秀な人でも、すぐに替わりが務まらないのである。

おそらく前者(優秀さ)よりも後者(信頼あり)の方が替えの人材を見つけることは難度が高く、仮に見つかっても以前と同じ状態になるためには時間がかかるに違いない。誰しも新しい環境で他人から評価・信頼されるには、乗り越えなければならないハードルがたくさんある。

優秀なうえに協調性のある人物である必要があり、コミュニケーション能力の高さも求められることだろう。替えのきかない人物とみなされるには360度(全方面)、上司や同僚、部下など幅広く多くの人から評価される必要がある。例えば、上司からだけ評価の高いゴマすりタイプでは、会社にとって替えのきかない人材にはなれない。

会社には「替えのきかない人材」ばかりいてもNG

個人が会社の中で替えのきかない人材を目指すことは、会社での居心地を良くすることにつながるが、会社にとって社員が皆、替えのきかない人材ばかりでも困る場合もある。もちろんパフォーマンスの高い社員がたくさんいれば会社は発展するし、人材が豊富な会社として未来は明るい。当然、社員が相互に信頼していることで組織風土が良くなり、ロイヤルティの高い社員が増えること自体にマイナス要素はほとんどない。

一方、人材の替えがきかない状態では、その人物本人への依存度を高めることになる。本人しか知らない、本人しかできないという状態にはリスクがあるということだ。本人がいるうちはいいが、例えば病気や事故で休みを取らざるを得なくなったらどうするのか。また、もし本人が転職してしまったら、その損害は大変大きくなる。つまり、会社としてはある程度人材の替えがきく状態を維持しておかなければ、リスクが高い事業運営となってしまいかねないということである。

会社にとってここのあんばいは難しい問題だ。優秀な人材が欲しく、一人ひとりのパフォーマンスも上げたい。チームとして社員が互いに信頼関係を築き、いい組織風土も作りたい。社員のロイヤルティも高い方がいい。しかし新しくチームに加わる中途採用者がなじみにくい組織風土は良くないし、人材の流動化があまりない組織も、会社の発展としては弱くなる。今の時代に個人が持つ就労観やキャリア観ともそぐわないかもしれない。

では人材の替えがきく状態を作るにはどうしたらいいのだろうか。それには仕事の業務フローを明確にし、社内で情報共有ができる状態を作り属人化を防ぐこと、そして社員間の業務の引き継ぎに漏れがないようにしなければならない。あらゆる階層で社員教育を体系化して、業務知識、スキル、ノウハウなどの標準化も実現したい。新卒採用だけでなく中途採用にも積極的に取り組み、出戻り社員の受け入れを推進することも人材の流動化を推進させる。

優秀な替えのきく人材が流動化していくことを見越して、企業は組織風土を作り、事業モデルを進化させていくことが必要なのだ。

居心地のいい理想の職場とは

再三述べるが、個人にとっては、会社にとって「替えのきかない人材」になることが、会社での居心地を良くするためのカギである。

俗にいういい会社、いい職場の理想は、給与や福利厚生などの待遇が良く、便利な場所に立派なオフィスビルがあり、使用するPCやシステムが最新で使いやすいものであって、長時間労働などの就労上の問題はない。さらに、各種ハラスメントもなく、職場の人間関係が良く、自分が成長するための教育機会も豊富にある。そのうえで会社の業績もいいことなどが挙げられる。

就職・転職企業の人気ランキング上位に入るような会社は、世間的には上の項目の平均点や総合点が高いとみなされて、イメージのいい会社(ホワイト企業)として知られている。一方、そうしたイメージのいい会社でも、さまざまな理由で辞めていく社員はもちろんいる。つまり、個人にとって居心地のいい理想的な職場は、ホワイト企業にあるとは限らないのである。

あくまでも仕事を通じてさまざまな経験を積み、日々研鑽して業務知識を身に付け、仕事仲間との協業を通じて社内外に多くの信頼関係を築くことで、個人的な満足度を得てこそ理想的な職場となる。つまり「人気の企業(ホワイト企業)=理想的な職場」ではないことは明白だ。理想的な職場を得るには、私たち一人ひとりの努力も欠かせないのである。
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