植物を利用した風通しの良い室内
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窓辺のプランターにはヘチマやニガウリなどが植えられていました。「植物は上に伸びていくので、上の階の居住者にも協力してもらう必要があるのです」とのこと。入居前から居住者同士の交流があったからこそ可能だったのでしょう。 |
室内にもおじゃまさせていただきました。こちらのお宅ではリビングが北西向きになっています。というのも、例のケヤキの木が北西側に立っているからです。「庭の緑から運ばれてくる涼しい風を、リビングで受けたかったのです。分譲マンションではリビングは南側というのが半ば常識ですが、必ずしも南向きが明るくて気持ちがいいとは限りません」と、居住者の方が話してくれました。逆に南側の窓はというと、高さが65cmの横長な形をしています。夏の日射を遮るためにこの形にしたそうです。窓辺にはプランターが設置され、つる性の植物がワイヤーを伝って緑のカーテンの役目を果たす仕組みになっています。植物は水を蓄えて蒸散するので、夏の暑さを和らげてくれる機能があるのです。温度計で測ったところ、外の建物の屋根が50℃を超えていたのに対し、窓辺の緑の下は24℃しかありませんでした。
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住戸の中央に配置されたキッチン。間仕切り壁の上部が開いており、風が通り抜けるようになっています。冬は蓄熱暖房機1台で住戸全体が暖まるそうです。 |
ほかにも、この住戸内にはエアコンを極力使わずに快適に暮らすための工夫がいろいろと取り入れられています。窓サッシにはペアガラスを使用して熱の出入りを少なくし、さらに断熱カーテンを設置した省エネ仕様です。といっても、窓を閉め切るのではなく、北西からの風を室内に取り込み、蓄熱作用のあるコンクリートを冷やして部屋全体を涼しくする仕組みになっています。そのため、雨戸は格子状でカギがかかる防犯仕様となっており、夜でも窓を開けて寝ることができるのです。さらに床には調湿機能のあるツガの無垢材が使われており、部屋の空気が乾燥するのを防いでいます。よく見ると、室内には壁に囲まれた「個室」がありません。知人や友人が気軽に集まれる開放感を演出すると同時に、住戸内に風が通りやすくする仕掛けでもあるそうです。このマンションはひとつとして同じ間取りがありませんが、どの住戸も開放的で風通しがよい点は共通しているといいます。
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エントランスのメールボックスは敷地にあった木を再利用してあります。「昔からのものを引き継ごう」という居住者全員の思いから出たアイデアだそうです。 |
「設計段階から居住者が参加できるコーポラティブ住宅だから、夫婦や子どもとの『距離感』を間取りで表現できるのです。さらにマンション内外の緑の環境を生かすことで、本当に気持ちよく暮らせる住まいが実現できる。この欅ハウスでの体験を、今後のマンションづくりに生かしていきたいですね」とは、事業を手がけたリブランの社長であり、欅ハウスの住民でもある鈴木雄二さんのお話です。自然環境を生かしたマンション「エコミックス」シリーズを手がける同社の、今後の取り組みに期待したいところです。
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