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SF小説の陽電子頭脳が描いた世界とは?

アシモフの短編集で描かれた陽電子頭脳。SF小説上の架空の技術であるが、現在この陽電子が人間の生命に大きな影響を持ってきた。陽電子とはいったいどのようなものなのか。その実用化の現状は。

執筆者:木村 勝己


ロボットの頭に陽電子頭脳

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SF作家のアシモフは、現代にも伝えられている「ロボット工学の三原則」を書いて有名な短編集「われはロボット」を1950年に発刊した。

物語は西暦2057年の話し。登場するヒロイン、ロボット心理学者スーザン・キャルヴィン博士が、2002年に初めて発声装置をもった自力走行ロボットの公開を見る。この時代のコンピュータには陽電子回路が組み込まれており、ロボットの人工頭脳にも陽電子回路が使われていたことになっている。

アシモフが小説を書き出した1940年にはまだトランジスタさえも発明されておらず、陽電子は発見されたばかりだった。

SF小説上の架空の技術?

この人工頭脳は、プラチナ・イリジウムのスポンジ状合金にランダムに発生する陽電子を用い、脳としての機能を有すると説明されているが、あくまでSF小説上の架空の技術である。そしてロボット工学の三原則は不変の原則としてこの頭脳にプログラムされ、人間とロボットの共存がはかれるのだ。

≪ロボット工学の三原則≫
第一条
ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。

第二条
ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りではない。

第三条
ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。

(アイザック・アシモフ「われはロボット」小尾芙佐訳、ハヤカワ文庫より)


ところで陽電子とはどのようなものであろうか。その前に、電子について簡単に触れたいと思う。物質を構成する最小単位として原子が存在する。原子は陽子・中性子からなる原子核と電子からなっている。

そして次ページのように自由電子が生まれるのである。
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