テフロン加工のフライパンは、フランスでの偶然の産物である。デュポン社の研究員ロイ・J・プランケットは、新しいフロン開発の為にTFEガスを数本のボンベに入れて、ドライアイスで冷やしてその日の実験を終了した。
翌日、そのボンベを使用しようとするとTFEガスは出てこなく、ボンベの中には白い固体が出来ていた。ドライアイスの温度と適度な圧力がなしえた産物である。これを色々分析すると新しい性質がいろいろ発見されたのである。多くの薬品にも強く、水により腐食することもない。この新しい物質の製造方法を確立して特許出願したのである。
フライパンにテフロン加工するには、その後多くの人の技術検討が加わることとなるが、この偶然の発見により、こびりつかない、傷もつきにくい調理器が誕生したのである。
偶然への敏感な反応
ここまで偶然による発明を見てくるとアイデアを得るヒントが見えてくる。ある課題にひたむきに取り組んでいる姿がある。試行錯誤を繰り返し粘り強く実験を繰り返している。その中で悩んでいると、身近に起こった偶然が解決のヒントになる。
それは近くの人の会話からも偶然得られたりもする。この課題に対する姿勢、思い入れが見逃しなちな日常の偶然を解決のヒントとして与えてくれる。
調光ガラスでの経験
以前、展示会で調光ガラスを見つけた。電圧のオン・オフによりガラスが透明になったり、白色になったり瞬時に出きるものである。オフィスの間仕切りに利用が考えられていた。
この材料で何か便利なものが出来ないかと考えていたころの話しであるが、ある時多くの人に混じって交差点で待っていると、歩行者用の信号が全部点灯した状態に見えて、信号が青になってもわからない状態であった。西日がランプの反射板に反射して、赤や青の色フィルターを照らしたのである。
歩行者用信号機
このとき急に調光ガラスのことが頭に浮かんだ。それは信号ランプの全面にこのガラスを設けて、ランプの点灯と同期して透明に切り替えれば、太陽光による反射の問題を解決できると。
これは信号灯以外にも自動車のブレーキランプ等にも応用することで特許出願した。偶然は常に問題を意識していると身近にあるのかも知れない。
そして商品化には次ページのように強い信念が必要なようだ。