技術の進歩は時間の概念や距離の概念を変えてきた。電話は遠くにいる家族や恋人との会話を実現させてくれた。
テレビやラジオはスポーツや事件の現場を実況で伝えてくれる。それは映像と音声とにより、あたかもその現場で見ているかのごとく状況を伝えてくれる。双方向のコミュニケーションも可能になってきた。だがそれはあくまでも人間の視覚と聴覚に頼った情報である。
人間には五感がある
しかし人間の感覚能力は大きく、映像と音声の情報伝達だけでは不足である。五感に訴えた情報を伝達できれば、大きな臨場感や存在感を伝えることができる。
そう、人間には「聴覚」「視覚」「味覚」「嗅覚」「触覚」を感じ判断する能力があるのだ。これらにそれぞれの情報を伝えられる通信が実現できれば、環境そのものを伝送できたことになるのではないか。視覚と聴覚を合わせると情報伝達の55%をカバーするが、味覚、臭覚、触覚で残りの45%を担っているのである。
次は香り伝送か?
そして今、バーチャルリアリティの研究とともに、五感通信の研究が活発化してきている。今回はこの中で臭覚に対応した“香り伝送”について報告したい。
つまり遠くの様子を映像や音声だけでなく、香りも含めて伝えようとするものである。これには匂いセンサーと共に香りの合成技術が必要になる。匂いセンサーで感知した香りをデジタル信号化し、それをインターネットを使って送信し、受け手が香り合成器で、送り側の香りを合成して再現するものである。