提案営業は「顧客が抱える問題を見極めて解決策を提案する営業手法」である。顧客が抱える問題を把握することができたら、次はその問題をニーズに変換する。
■ あるべき姿とのギャップからニーズを生み出す
問題をニーズに変換するには、顧客に「あるべき姿」を示してあげればよい。あるべき姿とは、いま抱えている問題を解決すれば実現する「顧客にとっての理想像」のことだ。
顧客が抱えている問題というのは「あるべき姿」と「現状の姿」のギャップである。顧客は「あるべき姿」を認識すると、「あるべき姿」と「現実の姿」を比較することで、「解決すべき問題」を自然と自覚する。
また、「あるべき姿」と「現状の姿」のギャップは、「理想と掛け離れている現実」を突きつけるため、顧客は心理的に不満・不快な状態になる。その結果、「問題を解決してあるべき姿になりたい」というニーズが生まれる。
■ 事例を紹介することで理想像を作り上げる
顧客に「あるべき姿」を示すには、「あなたはこうあるべきです」と直接的に言い切ってしまってはいけない。顧客のプライドを傷つけ、逆効果になってしまう。顧客と同様の問題を抱える他社の事例を紹介することで、間接的に「あるべき姿」を提示したほうがいい。これなら顧客のプライドを傷つけることはない。それに、営業担当者が直接指摘するよりも、事実(つまり実績)を示したほうが説得力がある。
自分と同様の問題を抱える他社が、どのように問題を解決して「あるべき姿」を実現したのか。このような事例の話なら、顧客はよろこんで聞いてくれる。
■ 顧客の感情を無視した提案は失敗する
失敗する提案営業は、「問題をニーズに変換する」ステップが抜けている。このステップが抜けている提案営業は、顧客に「あなたは問題がありますね」「では、このような提案はいかがでしょう」とやっているようなものだ。これではうまくいくはずがない。
「問題を解決したい」という動機づけができないままに提案をすると、顧客は押し付けがましさを感じ「売りつけられないようにしなきゃ」と身構えてしまう。こうなってしまうと、これまでに築いてきた信頼関係も崩れてしまう。
提案して欲しいと思わせてから提案する。この簡単な原則を忘れているがために、提案営業はことごとく失敗に終わるのだ。
■ 問題をニーズに変換する科学的な裏付け
「あるべき姿」と「現状の姿」のギャップからニーズを生み出すというこの手法には、「認知的不協和」という心理学の理論が応用されている。
人は自分の思考や態度に矛盾が生じると不快になる。このような状態を認知的不協和という。認知的不協和は、心理的に不快な状態であるため、不協和を解消して矛盾のない状態を回復しようとする。
例えば、喫煙者にとって「自分はたばこを吸う」という態度と「たばこは健康に悪い」という認識は不協和の関係にある。このとき、喫煙者は不協和を解消するために、以下のような行動をする。
・たばこをやめる
・たばこに害は無いと信じ込む
(みんな吸ってるけど平気、たばこに害が無いという情報を探す)
つまり、不協和要素のどちらかを否定することで、バランスを回復しようとするのだ。
問題をニーズに変換する場合も、「本当はこうあるべき」という認識と「理想とかけ離れている」という現実は、不協和の関係にある。不協和を解消するには「問題を解決する」か「あるべき姿を否定する」しかない。「あるべき姿」が(顧客にとって)正当であり、他に阻害要因がない場合、顧客は「問題を解決する」という選択をすることになる。つまり「問題を解決したい」というニーズが生まれるのだ。
■ 次のステップでは
次のステップでは、いよいよ問題の解決策を提案する。顧客の問題を解決する手段として、自社の商品やサービスを提案するのだ。
■ 【連載】提案営業実践ガイド |
第1回 提案営業入門の入門 |
第2回 いきなり提案しちゃダメ! |
第3回 顧客が抱える問題はこれだ! |
第4回 理想-現実=ニーズ? |
第5回 問題の解決策を提案する |
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