コーチングとは質問をして相手から答えを引き出すことだと思っていませんか? それでは単なるインタビューや情報収集と変わらなくなってしまいます。コーチングとはそもそも何なのかを振り返ってみましょう!
《CONTENTS》●「答え」を引き出すか? 「力」を引き出すか?(1P目)●力を呼び覚ます3つの道(1P目)●未体験ゾーンに連れて行く(2P目)●「答え」ではなく、「応え」を聴こう(2P目)
「答え」を引き出すか? 「力」を引き出すか?
コーチングはインタビューとは違います |
山田課長は部下の加藤さんに質問を投げかけて、その答えを待っています。自分としてはプロジェクトの方向についての意見を持っていますが、あえてそれは言わずに、部下の加藤さんの答えを引き出そうとしているのです。
このように、指示・アドバイスではなく、質問をすることで相手に自ら考えさせて、その答えを引き出す手法を「コーチング」だと思っていませんか?
確かに「コーチングっぽく」はありますが、相手の「答え」を引き出そうとしているのであれば、コーチングではありません。コーチングとは相手が本来持っている「力」を引き出していくものだからです。
「質問」は相手が自らの力に気づいていくためにとても有効な手法ですが、相手の「答え」を引き出すことにとらわれてしまって、「力」を引き出すことを忘れてしまっていては元も子もありません。
あなたは部下に質問するときに、「答え」と「力」、どちらに意識が向かっているでしょうか?
力を呼び覚ます3つの道
とはいえ、相手の本来持っている「力」を引き出す、意識を向けるといっても、具体的にはどうしたらいいのでしょうか?それにはさまざまな方法がありますが、コーチングの流派の一つである「コーアクティブ・コーチング」では、次の3つの道があると考えています。
■ フルフィルメント:自分が大切にしたい価値観をフルに尊重して生きる
■ バランス:自ら視点や行動を選択し、人生の主人公として生きる
■ プロセス:何事もありのままに受け止め、すべてを味わって生きる
(詳しくは『コーチング・バイブル 第2版――人と組織の本領発揮を支援する協働的コミュニケーション』ローラ・ウィットワース他著 CTIジャパン訳 東洋経済新報社 をご覧ください。)
コーチングでは「あなたはどうしたいの?」という質問がよく使われますが、これはそこから相手の価値観を引き出し、それを尊重して生きていく入り口になるからですし、また、相手が自ら選択して生きていく入り口になるからです。ただ、相手の考えや願いを聴いているわけではありません。
コーチである上司は、自分がどの道を通って相手の力を引き出そうとしているのかを自覚して、どの道を取るかを選択し、しっかりとその道に入っていかなければなりません。これをコーチが「舵を取る」といいます。コーチがこの舵をしっかりと取っていかないと、コーチングはどこにも行かずに、単なるお話になってしまいます。
3つの道のうち、「フルフィルメント」「バランス」については、ある程度イメージがつきやすいと思いますが、「プロセス」はどうでしょう? この「プロセス」では上に挙げた「あなたはどうしたいの?」といった質問は使いません。むしろ、使ってはいけないと言ったほうがいいぐらいです。
「プロセス」とは、ただただ「今」に意識を向け、とにかく「体験」することだけを行うコーチングなのです。
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