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哲学者に聴く ・本当の自分を探す(前編)(2ページ目)

「本当の自分」って何でしょう? どうすればそれを見つけられるのでしょう? 2回にわたって哲学者の山竹伸二さんに「本当の自分」についておうかがいしました。

宇都出 雅巳

執筆者:宇都出 雅巳

コーチング・マネジメントガイド

「本当の自分」の条件は「自由」と「承認」

――現象学的に考えて、「本当の自分」を実感する条件とは何なのでしょう?

山竹:詳しくは、『「本当の自分」の現象学』という私の著書をご覧いただきたいのですが、結論から言うと、「自由」と「承認」です。人は「自由」と「承認」が得られたときに、「本当の自分」を実感することができるのです。

――ということは、行っている仕事が何であれ、「自由」と「承認」さえ得られれば、「これは本当に自分がやりたい仕事だ」と思えるということなのでしょうか?

山竹:「自由」と「承認」はあくまで条件なので、必ず「本当の自分」の実感が得られるとは限りません。しかし、やっている仕事の内容より、「自由」と「承認」が得られるかどうかが重要になるのは確かです。

例えば、ある会社に勤めている人が、周りからはその力を認められ、「承認」されているけれども、自分では何か周囲の期待に合わせているだけの「偽りの自分」と感じて転職したとしましょう。「承認」はあっても、「自由」がなかったわけです。

転職先の新しい仕事は確かに自分で選んだもので、自分の思うように仕事ができます。「自由」はあります。しかし、周りからの「承認」が得られなければ、これが「本当の自分」なんだろうかと感じてしまう可能性があるのです。

「自由」と「承認」の両方に目を向ける

――ということは、どんな仕事をするか、具体的な仕事内容はそんなに重要ではないということでしょうか?

山竹:もちろん重要ですが、仕事や会社の内容ばかりに目を奪われるのではなく、「自由」と「承認」に目を向けることが大切なのです。「自由」と「承認」をどれぐらい得ているのか? もし十分に得ていないとしたら、どうやったら得られるのかを考えるほうが近道です。そうしないと、いつまでも転職を繰り返したりすることになりかねません。

――「仕事を変えれば……」「会社を変えれば……」と思いがちですが、実は本当に大事なことに目を向けていないわけなんですね。

山竹:「自由」と「承認」の両方に目を向けることが大事です。ついつい人は「自由」と「承認」のどちらか一つだけに目を向けて、それを満たすための行動をとりますが、その結果、もう一つのほうが失われると、「本当の自分」の実感は結果として得られなくなります。

――「自由」と「承認」のバランスも大事なわけですね。ところで、実際には、どうやったら、「自由」や「承認」をより満たせるのでしょう?

山竹:そのためには……(次回に続く



「本当の自分」を解くカギは「自由」と「承認」。自分自身の状況と照らしあわしてみていかがでしたか? 次回は、「自由」と「承認」をより満たしていくにはどうしたらいいのか? その方法を山竹さんにたずねていきます。お楽しみに!

「哲学者に聴く ・本当の自分を探す(後編)


【関連書籍】
■『「本当の自分」の現象学』(山竹伸二著 NHKブックス)
著者自身の「本当の自分」発見の体験を織り交ぜながら、「本当の自分」の謎に迫る
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