「子育てとは子別れの道に他ならない」。これは部下育成でも同じです。部下が自立して、別れていくためにはどんなかかわり方をすればいいのでしょう? 子育てにおける親子のかかわりを参考に、部下育成の指針を探ります。
《CONTENTS》●部下育成も子育ても、目標は相手の自立(1P目)●日頃から部下をよく見る癖をつける(1P目)●「和気あいあい」より「ぶつかり合い」(2P目)●マニュアルではなく、部下と向き合おう(2P目)
「子育て」に学ぶ部下育成(前編)
部下育成も子育ても、目標は相手の自立
あなたは部下をよく見ていますか? |
確かにこういったことも大事ですが、最終的な目標は部下が自立することです。ついつい、上司としての存在感を示すことや、目の前の仕事に追われて、部下育成の目標を忘れている人がいるかもしれません。あなたの部下へのかかわり方は、この目標のためになっているでしょうか? もう一度見直してみましょう。
これは子育てについても同じです。何か教えること、世話を焼くこと、何かをしてあげることに気を取られてしまいがちですが、子育ての目標は、子どもと親が相互に自律的存在となることです。ところが、お互いによりかかりすぎて子離れできない親、親離れできない子どもになっていないでしょうか?
「子育てとは子別れの道に他ならない」と主張する根ヶ山光一・早稲田大学教授は、親子の間に起こるネガティブな感情や反発性も、子どもの自立を促すものとして積極的に評価しています。前編では、根ヶ山教授の子育て論を参考に、部下が自立するという目的に立ち返って、部下育成におけるネガティブな感情について考えていきました。
後編の今回は、根ヶ山教授が行っている子育ての4つの提言を参考に、部下育成における指針を探っていきます。
日頃から部下をよく見る癖をつける
それでは根ヶ山教授の提言を見ていきましょう。まずは一つめです。■提言1:ほどよい隔たりを実現し、子どもの行動をよく観察する
前編で紹介したように「離れつつ保護する」というバランスが大事になってきます。あなたと部下との距離感はどうでしょう? 時には離れることが大事なときもあります。ネガティブな感情はそのために役立つのです。
「ほどよい隔たりは、行動の自由度をもたらし、子どもの主体性を見えやすくしてくれるとともに、子どもの心理・行動を親として客観的にモニターし、冷静に対応することを可能にするであろう。」(『<子別れ>としての子育て』(根ヶ山光一著 NHKブックス)より)
ネガティブな感情を大切にするといっても、単におもむくままに感情を出せばいいというものではありません。どんな状況では離れることが求められ、どんな状況では近づくことが求められるのかを、相手の心理・行動を観察して、その兆候を拾い上げていくことが大事です。
そのためには、シンプルですが、「日頃から部下をよく見る癖をつけること」が必要です。今、部下がどういう状態なのか、自分の言動によってどんなインパクトを受けているのかなど、常に部下に意識を向けておくのです。
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