前回に引き続き、ハコミセラピストの高野雅司さんに、マネジメントにも活用できる相手との深いかかわり方を紹介してもらいます。シンプルでありながら、自然と相手に安心できる場を提供できる画期的な方法「ラビングプレゼンス」について解説していただきます。
■ 前編 セラピストに聴く1 「存在」を受け止める
「ラビングプレゼンス」とは?
何かを与えなければ…と疲弊していませんか? |
――前回の最後にお話があった「存在」レベルでのかかわり、「ラビングプレゼンス」とはどのようなものですか?
高野:相手の「存在」レベルにチャンネルを合わせて、「自分にとって」栄養となるエネルギーを受け取ることです。「何か自分を満たしてくれるエネルギーを受け取れないか」という視点で相手を見て、相手から感じ取れるエネルギーを受け取り、自分を気持ちよくするというかかわりあいです。
――「エネルギー」ですか? そもそも相手の存在からそんな「栄養となるようなエネルギー」は出ているものですか?
高野:人間は「真・善・美」といった普遍的な価値を、いろいろな行動を通じて具現化して生きています。もちろん、そういったポジティブなものだけではなく、暴力性や憎しみなどネガティブなものを表現している時もあるでしょう。
そのように、いろいろなものを表現しながら生きているのが人間です。
ですから、人間が存在していれば、必ず何らかのエネルギーがその人を通して流れ出ています。その中から、自分にとって栄養になるものだけを感じ、受け取るのです。
――「自分にとって」なんですか? 何か利己的なような気もしますが……
高野:セラピストはサービスを「提供する側」ですから、相手に何かしてあげようとか、共感してあげようとか、ついつい「与えて」あげようとしがちなものです。
でも、「ラビングプレゼンス」では、それとは逆に、相手の存在から、何か自分自身が心地いいとか、満たされるとか、喜びを感じたりするエネルギーを受け取ろうとします。与えるより、まず受け取ることから始めるのです。
まず「受け取る」から、相手に感謝できる
――それはお互いのコミュニケーションの役に立つのでしょうか?
高野:はい。不思議なことに、それが「相手が安心して話せる場を創る」ための礎となってくれるのです。「自分にとって」栄養になるエネルギーを相手から受け取ると何が起こるのかというと、相手に対する「ありがとう」という感謝の念が自然に起こってきます。
理屈で感謝するわけではなく、相手から何かをもらっているので、自ずと感謝の気持ちが湧きあがってくるのです。すると、相手を受け入れたり、尊重していくという態度が、当たり前のようにできてきます。そして、それが目に見えない形で相手へと返っていく…。言葉にしなくても、尊重のエネルギーが相手に伝わり、安心していくのです。
そうなると、相手の人はさらにオープンになっていき、その人本来のより善きエネルギーが流れ出てきます。すると、さらにセラピストが受け取れるエネルギーは強まり、ますます心地よくなっていく、という「善循環」が起こり始めます。
――なるほど。これは上司と部下の関係にも応用できそうですね。
高野:もちろんです。あらゆる人間関係で活用できます。セラピストと同じように、上司も何か相手に与えなければという意識になりがちです。でも、まずはこの「ラビングプレゼンス」で自分を満たすところから始めればいいんです。
自分を満たすことから始めるので、疲弊しないですみます。一所懸命に相手のためとか、与えることだけを考えていると、いわゆる「バーンアウト」、つまり燃え尽きてしまいがちです。それを防止するためにも、ラビングプレゼンスは重要です。セラピスト、コーチ、上司にしろ、自分自身をいい状態に保っておかないと、本当に人と良いかかわりを持つことはできません。
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