新築中心の持ち家政策を転換
日本の住宅は欧米に比べ短期間で壊されるケースが多い |
なぜ日本の住宅が短命なのかというと、「地震が多いから」「日本人が新築好きだから」という説もありますが、最も大きな理由は戦後の持ち家政策にあるようです。人口に比べて不足気味だった住宅の量を確保するため、公団や公庫を活用して新築物件が大量に供給されました。量的な不足が解消したあとも、新築中心の持ち家政策は経済成長を後押しし、バブル崩壊後は景気対策として現在まで脈々と続けられているというわけです。また戦後に建てられた住宅は広さや質的な面で十分とはいえない物件が多く、短期間で建て替えられるケースがあとを絶ちませんでした。
しかし、社会の少子高齢化で人口や世帯数が減少に転じつつあるこれからは、新築中心の住宅市場に多くを期待することはできません。さらに大量の産業廃棄物が排出される住宅の解体を頻繁に行うことは、環境対策という面からも望ましいとはいえないでしょう。
そこで福田前首相の肝入りで打ち出されたのが、長持ちする住宅を建てて大切に住み続けるという「200年住宅構想」だったのです。2007年に提唱された構想がその後、短期間のうちに具体化され、今年6月に「長期優良住宅普及促進法」が施行されることになりました。
6月4日の法施行から認定がスタート
新しい法律では、一定の基準を満たす住宅を「長期優良住宅」に認定し、税金の軽減などが受けられることになっています。一定の基準とは以下のような内容です。■長期優良住宅(200年住宅)の認定基準(マンションの場合の概要)
・劣化対策……劣化対策等級3に加え、コンクリートの水セメント比の基準を強化
・耐震性……耐震等級(倒壊等防止)2、または免震建築物であることなど
・維持管理・更新の容易性……維持管理対策等級(共用配管、専用配管)3、更新対策等級(共用排水管)3
・可変性……躯体天井高(床スラブ間の高さ)が2m65cm以上
・バリアフリー性……高齢者等対策等級(共用部分)3。ただし手すり、段差、高低差を除く
・省エネルギー性……省エネルギー対策等級4
・居住環境……地域における居住環境の維持・向上に配慮された環境であること
・住戸面積……1戸の床面積が55m2以上(自治体により40m2以上まで基準を下げられる)
・維持保全計画……少なくとも10年ごとの定期点検や、補修などに関する計画が策定されていること
※等級は住宅性能表示基準によるもの
認定を受けるには、法律が施行される6月4日以降に所定の手続きを経てから着工しなければなりません。つまり新築住宅のみが対象というわけですが、国としてはいずれ既存住宅でも基準を設けて認定できるようにしたい考えです。
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