どうにも苦手な部下・上司

嫌いな人との関係に悩んだら

嫌いな人との関係に悩んだら

「なんとかサポートしてやりたいと思うんですが、プライドが高くてどうしようもないんですよ」

こう愚痴をこぼすのは、ある大手コンピュータメーカーで流通業界の営業を統括する田中部長。田中部長は、昨年から配属された部下の山田課長のマネジメントに手を焼いています。

山田課長の担当は急成長を続ける新興スーパー。このスーパーへの営業如何で部門の業績や将来性が大きく左右されます。ただ、相手の新興スーパーは要求が厳しいことで有名で山田課長も苦戦しているようです。田中部長もできるだけサポートしようと思っているのですが……。

山田課長はもともと技術部門出身でしたが、社内の留学制度を利用してアメリカのビジネススクールでマネジメントを学び、営業部門に転属されてきました。将来の幹部候補生として、周囲の期待も高く、本人も結果を出そうとしています。しかし、意欲だけが空回りして、ここ1年、営業はうまくいっていません。課のメンバーからも浮いてしまっています。

これまで、田中部長はできるだけ山田課長の意思を尊重して任せてきましたが、先日、向こうの責任者から「担当者を変えてほしい」というクレームが寄せられ、頭を抱えてしまいました。

「こちらが何か言っても、頑なになって意見を聴こうとしないし、もうお手上げです」

さて、田中部長はどうすればいいのか、みなさんも考えてみてください。

何でもいいから、違うことをする

「これは大変だなあ。こんなときにはどうすればいいんだろう?」

こんなふうに考え込んでしまった人が多いのではないでしょうか? もしかすると、中には、自分自身が仕事で苦手な相手を思い浮かべて、悩みはじめてしまった人もいるかもしれませんね。

でも、実はこの答えは簡単です。田中部長は悩む必要はないのです。というより、悩んでいる場合ではありません。悩んでいろいろ考えていても、山田課長との関係は変化していきません。田中部長に必要なのは、たった一つのこと。それは……

「何でもいいから、違うことをする」

これまでうまくいっていないわけですから、これまでのやり方を続けていてもうまくいかない可能性は大。だから、何か違うことをやってみればいいのです。

「そんな、無責任な……」と思われるかもしれませんが、何かうまくいかないことが続く場合をよく振り返ってみると、そこには何かに固執しつづけたり、一つの枠に入ってそこから抜け出せていないあなたがいるのに気づくはずです。まずは、自分自身がこれまでのやり方、考え方などを手放す、自分の枠から一歩踏み出てみることが必要不可欠なのです。

とはいっても、何か違うことをする、今までの枠から一歩踏み越えるためには、何かきっかけがほしいですよね。そのきっかけとなる、田中部長やあなた自身が枠を踏み越えるための4つの扉を次にご紹介します。

ありのまま/真実・つながり・生き生き感・思い切り/勇気

コーチングの一つの流派であるコーアクティブ・コーチングでは、コーチングの関係において次の4つの要素が現れていることが大事だと考えられています。

1)ありのまま/真実(Authenticity)
2)つながり(Connection)
3)生き生き感(Aliveness)
4)思い切り/勇気(Courage)


あなた自身、苦手な人との関係において、この4つのうちどれが強く現れていますか? もしくは現れていませんか? その人との場を思い出して、問いかけてみてください。

どれぐらい、あなたはありのままでいますか? 本当のことを率直に話していますか? 見栄えはよくても、土台がしっかりしていない関係になっていませんか? コーチングの関係では、ゴツゴツしていても、ありのままでむき出しで、お互いが相手を信じている関係になることが重要です。

相手と話しているとき、どれぐらい相手とつながっているでしょう? 二人が携帯電話を持って話していると想像してみてください。ちゃんと電波は通じてつながっていますか? 声は聞こえていますか? 「好き」とか「嫌い」などは脇に置いて、二人のつながり度合いを考えてみましょう。

どれぐらい、その関係・場が生き生きとしていますか? 喜びや楽しみといったポジティブなエネルギーにかぎらず、怒りや悲しみなどのネガティブなエネルギーでもかまいません。どれぐらい、生き生きとした場になっているでしょう?

もしかして、あなたは相手に嫌われないかと恐れていませんか? “いい人”でいようとして、臆病になっていないでしょうか? どれだけ、相手のために勇気を持って、危険を冒していますか? 二人の関係は勇気に満ち溢れたものになっていますか?

自分が変わるから相手も変わる

田中部長が山田課長との関係・場を、この4つに照らし合わせて考えたとき、さらに自分ができる事の可能性が見えてくるでしょう。

例えば、感情をもっと表現する(生き生き感)、相手の言葉や気持ちをもっとしっかりと受け止める(つながり)、思っていることをもっと率直に伝える(ありのまま/真実)、相手が怒りそうなこともあえて言う(思い切り/勇気)。

あなた自身はどうでしょう? あなたにとって、仕事の人間関係の中で苦手な人はだれですか? そして、あなたが関係をぜひよくしたい人と思う人はだれでしょう? その人とのかかわりの中で、あなたは新しく何を試しますか?

「ちょっと怖いですね」「なかなかできないですよ」

そんな恐れが出てくるかもしれません。なぜならば、たとえ相手との関係がうまくいっていなくても、自分の枠の中で行動していることは、意外と居心地がいいものだからです。しかし、そのままでは何も変わりません。

怖いかもしれませんが、あなた自身が変わることでしか、相手や相手との関係は変わらないのです。逆にあなたが変われば、相手との関係は何かしら変わり、相手も変わり始めます。

もちろん、生身の人との関係では、「これをやればこうなる」と100%の予測はできません。しかし、だからやらないではなく、だからこそ、いろいろと試す必要があるのです。

苦手な人との関係を、まずは生き生き感・つながり・ありのまま/真実・思い切り/勇気に照らし合わせて振り返ってみてください。そして、特に自分が弱いところと向き合い、あえてその扉を開いて何か今までと違うことを試してみてください。諦めずにやり続けるなかで、相手との関係が動き始め、光が見えてきます。

【参考書籍】
■『Co-Active Coaching: New Skills for Coaching People Toward Success in Work And Life』(Written by Laura Whitworth, Karen Kimsey-House, Henry Kimsey-House and Phillip Sandahl Davies-Black Publishing)

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