「できる感」はどんどん高められる
あなたは部下の「できる感」を低めていませんか? |
青木:そのとおりです。上司は論理的に何をすべきか、したら良いかは考えても、部下の「できる感」がどうなっているかには無関心です。
もともと「できる感」が強い部下の場合は、やること<what>さえ決めれば勝手にやっていきますが、「できる感」が低くなっている部下の場合はうまくいかない可能性があります。多くの上司がアメやムチで部下を動かそうとしたり、「あいつはやる気がない」といって部下を見放したりしますが、もっとやれることがあるんです。
――どういうことですか?
青木:部下に小さくても確実にできる行動を積み重ねてもらうことです。上司はついつい、部下に過大な目標を与えがちです。そして、部下ができなければ、「この部下はできないやつだ」と言うのです。
そうではなくて、もしできないのであれば、できるレベルにまで行動を小さくすればいいのです。これから実行する目標をなるべく小さくして、<やると決める→できる→できる感が高まる>というサイクルを繰り返すのです。それで内側から湧いてくる「自分にもできそうだ」というエネルギーを高めるわけです。
スモールステップだとうまくいかなくてもダメージが少ないし、軌道修正も早めにできるという利点があります。
もう一つ「うまくいっていることを数える」効用の事例をご紹介させてください。先月のイタリアでのセミナーでご一緒したオーストリアの電力会社のエグゼクティブ、ザインホッファー氏にインタビューして聞いた話です。
彼の会社が昨年電気料金の値上げを行ったところ、マスコミに叩かれたり、お客様からのクレームでコールセンターの電話がなりっぱなしになったり、政府からも報告書の提出を、求められるなど大きな「問題」になったそうです。社内でも「今回の値上げは失敗だった」という雰囲気が広がりました。
そこで担当重役であるザインホッファー氏が、担当者を集めて対策会議を開きました。彼はソリューション・フォーカスを実践していたので、この会議を行うにあたって、2つの質問しかしないことに決めたそうです。
失敗プロジェクトが成功プロジェクトに
青木:その質問とは次の2つです。「何がうまくいったのか?」
「次にやるとしたら、何を変えるか?」
そんな状況でしたから誰も「うまくいったこと」に注目していなかったのです。
実際に会議を始めてみると、予想外にたくさんうまくいっていることがリストアップされて、「あれ、もしかしたら今回の値上げプロジェクトは成功だったんじゃないか?」というようにとらえ方が変わったのです。そこから部屋の空気は全然違ったものになったそうです。
さらに、「次にやるとしたら?」という質問で、今回問題になったところを改善するアイデアもどんどん出てきたらしいですよ。
――普通は「何がうまくいかなかった?」という質問から入りますからね。どんな質問を投げかけるかによって、全く参加者のエネルギーが変わるんですから、とても大事ですね。
青木:ザインホッファー氏もソリューション・フォーカスを学ぶ前だったら「何がまずかったんだ」という質問をして、誰が悪かったという方向に流れ、重苦しい会議になり、多分2番目の質問までいけなかっただろうって言っていました。客観的事実ってあるようでないですからね。できていること、うまくいっていることに焦点をあてると「できる感」は高まりますよ。
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