コーチングの先駆者・落合監督
ここに1冊の本があります。「コーチング-言葉と信念の魔術」(ダイヤモンド社)。発行日は今から3年以上前の2001年8月30日。まだ「コーチング」という言葉がほとんど知られていない時期です。もちろん、落合監督は日本にも今はいくつかある「コーチ」養成機関で教育を受けたわけではないでしょう。あくまで、「俺流」コーチングです。ただ、今読み返してみると、そこにはコーチングの本質に触れる言葉がたくさん溢れています。最近伝えられるコーチングには、「部下を自分の思い通りに動かす方法」であるかのように誤解させるものも多いですが、この本はズバリとコーチングの本質を思い出させてくれます。
「コーチは教えるものではない。見ているだけでいいのだ」
「本当に部下を育てたければ、一回の失敗までは許そう」
「『良いコーチ』と言われたいのか、それとも『良いコーチ』になりたいのか」 (『コーチング』より)
監督の使命は人を育てることだけではなく、チームの優勝であり、チーム全体のことを考える必要があります。この点は、企業におけるマネジャーも同じでしょう。チームとしての業績目標達成が大きな目標としてあるはずです。単にコーチとしてではなく、監督、リーダーとしての役割も求められます。落合監督の次のような言葉は、コーチを超えたリーダーとしての役割が求められれる人には参考になる言葉でしょう。
「監督は“勝つこと”、選手は“自分のこと”だけを考えろ」
「現場の最高決定権は『指揮官』にある。そのことを曖昧にしてはいけない」
「責任は、まず組織の長が取る。そして当事者にも取らせるべきだ」 (『コーチング』より)
今年の落合監督の言動はこの本に書かれていることと驚くほど一致しています。この本を読むと、彼はこの本に書いたことを当たり前のように実践しただけであり、その当然の結果として優勝を手に入れたことがわかります。いくつかこの本に書かれているポイントを挙げながら、コーチング理論ともからめて見ていきます。