ありのままの自分を認める場を作る

田中氏が中心となって翻訳紹介したエグゼクティブコーチングの本格解説書

田中:だれもがどこかで自分自身のビジョンや本来の力を、薄々は気づいているんです。でも、それをダメなこと、変なことと封印してしまっています。その封印している思いを口に出してみて、ありのまま受け止めることが、自分を認め、自己効力感を高めることにつながります。

――それは、上司とのコミュニケーションでもできるのではないですか?

田中:実際はなかなか難しいですね。上司と部下の間には利害関係がありますから。もちろん、すぐれた上司はありのままの部下を認めることを行っていますが、成果主義=個人主義と解釈されてしまい、元は日本企業の強みだった部下育成の文化が薄れてしまった企業が増えました。

――実際のコーチングでは何が行われるのでしょう?

田中:大事なことは二つです。人として認められること、人として大事にされること。これをベースに話を聴いてもらえれば、自分自身や自分が考えていることについて、抑えることなく吐き出すことができます。それをコーチに受け止めてもらう。実際にマネジャーのコーチングをしていると、「ありのままに」全部吐き出してしまい、ありのままの自分を認めることができれば、自ずと行動する力が湧いてきます。

コーチングを受けることがコーチング力を高める


――確かにマネージャー向けにコーチング研修をしても、「部下にコーチングするよりも、自分がコーチングしてもらいたい」という声がよく聞かれます。

田中:自分がコーチングを受けることで、ようやく部下や人にコーチングできるようになると思います。人からやってもらったことしか、人に対してできないのかもしれません。コーチングスキルを学ぶことも必要ですが、よりレベルの高いコーチングをするには、質の高いクライアントとしての体験がますます重要になるでしょう。

――コーチングを受けることでそのほかのメリットは何でしょう?

田中:コーチングを受けることで、マネージャーの大事な仕事である「意思決定力」が高まります。経営者をはじめ「決められないマネージャー」が増えていますが、これは自分自身が拠って立つ基準が明確になっていないためにブレているのです。コーチングを受けていると、自分自身の価値観や組織での存在意義が明確にできますから、意思決定のスピードと質が高まっていきます。

そして何よりもコーチングを受けることでマネージャー自身が成長することも大きいです。自分をどんどんストレッチして、人間としての器を広げていく。その上司の姿勢、あり方が部下の可能性を呼び覚まし、成長していきますから。

――今日はどうもありがとうございました。



「コーチング」というと「マネージャーが身につけるべきスキル」と思っている人が多いかもしれませんが、もともとイギリスやアメリカではマネージャーのスキルというよりも、「エグゼクティブ・コーチング」として、経営者がプロのコーチを付けてコーチングを受ける形で広がっていきました。その後、最近になってリーダーの大事なスキルの一つとしてコーチングが注目されてきています。

日本ではこの逆で、まずはマネージャーが部下とのコミュニケーションをはかるためのスキルとして注目されて普及してきました。そして今、ようやく、経営者や経営幹部、マネージャーがプロのコーチを付けて、コーチングを受けることが徐々に広がってきています。

田中氏も述べているようにコーチングを受けることは、自分自身の成長にもつながるだけでなく、コーチング力をつけることにもつながります。ぜひ一度、プロコーチのコーチングを受けてみてはいかがでしょうか?



【関連書籍】
■『エグゼクティブ・コーチング――経営幹部の潜在能力を最大限に引き出す』(キャサリン フィッツジェラルド他著 日本能率協会コンサルティング訳 日本能率協会マネジメントセンター)


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