売主とメーカーのタイアップでマンションの設備を開発する例は少なくありませんが、最近ではさらに居住者の視点をとり入れるケースも出てきています。設備メーカーの担当者に、開発の経緯を取材しました。

標準仕様とは一味違うオリジナル性を追求

キッチンや浴室など水回りを中心としたマンションの設備は、売主であるデベロッパーが仕様を決め、それに合わせて設備メーカーが商品を納入するのが一般的なパターンです。形態としてはオーダーメイドですが、標準的な仕様がだいたい決まっているので、売主や物件による違いは素材のグレード感といった程度になる場合が多いでしょう。マンションは一戸建ての注文住宅とは異なり、実際に入居するエンドユーザーがだれになるか分からないので、設備も万人うけする無難なタイプに落ち着きがちです。

しかし、なかにはオリジナル色の強い設備を採用することで、使い勝手やデザイン性を高めているケースもあります。その一つの例が、売主と設備メーカー、それに居住者の“3者コラボ”によるユニークな商品開発を手がけている、野村不動産の「LUXMORE(ラクモア)」プロジェクトです。同プロジェクトでは住宅設備の開発のほか、プランや照明計画などスペースデザインの提案と、メンテナンス体制などソフトサービスのサポートにより、快適でストレスのない住まいを追求するとしています。なかでも肝となるのは、設備メーカーとのタイアップによる住宅設備の開発です。

掃除や作業がしやすい洗面ドレッサーが実現

ラクモアの洗面ドレッサーは三面鏡の中や洗面ボウル下の収納量も多めにしている
ラクモアの洗面ドレッサーは三面鏡の中や洗面ボウル下の収納量も多めにしている
同社では複数の設備メーカーと提携した商品開発に取り組んでおり、TOTOもそのうちの1社です。両社の共同開発により、これまでに洗面ドレッサーとバスルームが実際のマンションに採用されました。「野村不動産さんが会員向けにアンケート調査をしたところ、家事作業の負担や将来への不安といった声が多かったそうです。そうした困りごとを解決する水回り空間を実現できないかと当社に打診があり、当社としてもマンションユーザーの声を商品開発に反映できるよい機会になると考えました」(TOTO特販本部市場開発第一課・小島早紀さん)

開発にあたってはまず両社が共同で試作品を制作し、それを会議室に展示して会員モニターに実際に見てもらい、集まった意見を商品企画にフィードバックする手法を採用したそうです。その結果、第1号の商品として開発された洗面ドレッサーには、三面鏡の下部から下向きに設置される水栓(蛇口)や、金属の輪の部分(フランジ)をなくした排水口など、TOTOオリジナルの仕様が導入されました。「どちらの仕様も水垢が付きにくく、掃除がラクな点が好評でした。また水栓をボウルよりも上部に配置したことで、深くかがまなくても顔を洗えるようになっています。足元の爪先が入る部分の蹴込みを深くし、身体を鏡に近寄せられるようにするなど、作業のしやすさにも配慮しています」(TOTOバスクリエイト洗面承認設計グループ設計チーム・井口滋仁さん)

蹴込みのサイズには野村不動産のノウハウが生かされているそうです。水回りのプロと住まいづくりのプロとのコラボレーションが、使い勝手のよい仕様を実現させた一例といえるでしょう。

次ページではバスルームの例を取り上げます。