遊びのある空間が生む創造性
▲創造性を育むオフィスを作った |
そう感心しながらふと同社のオフィスを見渡すと、オフィスのいたるところに「遊び」を感じさせる空間があるのに気づきました(写真参照)。場所は品川のビル街にある最新の高層ビルのフロアで、創業した川崎のベンチャー支援施設から移転してきたそうです。
しかもつい先日までは、フロア内部に工場が設置されていました。あまりのスピードで事業が拡大したため、工場をお台場のビルに移さざるを得なかったそうですが、それにしても最新のインテリジェントビルの中に工場を設置するというのはミスマッチな印象があります。しかも多くの日本企業がコスト削減のために中国などに工場を移転させているのに、そのトレンドと逆行するように都心の一等地に工場を置いたのはなぜでしょうか。
「海外を視察したときショックを受けた出来事があったんです。まず中国に行ったときに見たのは、日本以上に最新の生産設備が置いてあり、極めて効率的に生産活動を行っていたある工場です。逆に香港では、日本で数十年前に使っていたような中古のロボットを使い、人海戦術も多用しながら、若くて優秀なエンジニアが意欲的に技術の取得に励んでいる姿でした。では彼らに対抗して日本はどうすべきか考えたとき、『これまでにない新しいものを生み出すしかない』と判断したんです。そのための環境として狭い部屋で仕事をするよりも、広々とした環境で感性を磨く必要があると考え、1日の大半を過ごすオフィスを一新したんです。日ごろからジャンクフードばかり食べていると、一流の料理人の味が分からなくなってしまうように、狭くて暗い工場では新しいものを生み出す感性が磨かれません。だからクオリティーに敏感になれる、その土壌となるようなオフィスをつくったのです。例えば工場の床を真っ白にしています。こうすると汚れが目立ちすぐ掃除するようになります。5Kといわれる工場を一変させようと思ったんです」
他社の動きにも惑わされない秋山さんの決断はプラスに出たようです。サキコーポレーションは引き続き急成長を続け、今や世界シェアナンバーワンの座も視野に入ってきたのです。
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