千葉ロッテマリーンズのボビー・バレンタイン監督(55)は、「パ・リーグのお荷物」と呼ばれた弱小球団を、監督就任わずか2年目で31年ぶりの日本一に導いた。「ボビー・マジック」と呼ばれる、変幻自在の采配術とは?
1シーズン18回退場した熱血監督
「コノチームハ、イチバンデ~ス!」
▲『ボビー流』ボビー・バレンタイン (著) |
自らの思いをややオーバーぎみにぶつけてくる監督に、ファンも大きな歓声で応え、愛情を込めて彼を「ボビー」と呼ぶ。ロッテの地元・千葉には「バレンタイン神社」がまつられ、試合中に何度も「ボビーコール」が起こるほどの人気だ。
ファンとの絆の深さも、監督の努力の賜物である。試合前、ベンチ上のスペースをファンに開放。選手に気軽にサインをねだれる「サインスペース」とした。日本でプレーする外国人選手と日本人選手との交流試合を提案したり、今年の日本シリーズでは「予告先発」を阪神・岡田監督にもちかけた。
オフは行動自由
選手に対してもサービス精神たっぷりの監督だ。ことあるごとに選手を称え、好プレーを演じた選手に最大限の祝辞を贈る。「よく振れていたね」「ホットだった」など、彼の語録イコールほめ言葉といっていい。もちろんオフの行動は選手の自由としている。バレンタイン監督は強烈な「激情家」でもある。大リーグの監督時代、1シーズン18回の退場記録を持つ。これも選手を大切に思う気持ちの表れか。
人間味あふれる指揮官としての情熱的なリーダーシップも、負け犬根性が染み付いた弱小集団を短期間で立て直した指導術の1つだろう。
だが、サービス精神や情熱だけが、年間140試合以上のペナントレースを勝ち抜き、日本シリーズで歴史的な圧勝を生んだ「ボビー・マジック」ではない。
“マジック”なるものの正体は、緻密なロジックの積み上げなのだ。